ピンホールカメラとイメージサークル

 一般のカメラのレンズでのイメージゾーンは、メーカが定める所の、光量落ちのない範囲ということになる。しかし、ピンホールカメラの場合、光量落ちを補正するレンズが無いので、センターから外れるにしたがって、距離の2乗で光量は落ちていくことになる。ピンホールカメラのメーカのカタログには、イメージゾーンのスペックは書かれていない。しかし、アマゾンのzone2000の販売ページなどに、イメージサークル87.5cmという表記がある。焦点距離25mmとイメージサークルの半径87.5/2=43.75mmから逆算すると、ピンホールからイメージサークルまでの距離は2乗の和のルートをとると、ちょうど50mmとなる。したがって、焦点距離の倍の所、すなわち、光量が2段落ち(1/4)の所を仮に、イメージサークルと仮定しているようだ。これはフィルムの特性にもよるものなので、仕様としては設定していないようだ。いずれにしても、このあたりから光量は急激に減ることになる。

 この計算から逆に、ピンホールカメラで撮影できる画角(イメージサークル)を計算すると、acos(25/50)x2=60°x2=120°となる。例えば、MIA6x6 10mmの画角は152°と計算上は出るが、120°程度以上は黒いサークルになる。これは実際には次のYouTubeのMIA6x6の20mmと10mmの比較で確認できる。20mmも126°なのでわずかにイメージサークルにかかっている。
Testing the Mia 6×6 10mm PINHOLE CAMERA

このような、”トンネル効果”が欲しければ、画角が120°以上のピンホールカメラなら期待できる。たとえば、4×5の25mmなども。いずれにせよ、ピンホールカメラの場合はイメージサークル内が同じ光量ではなく、センターから下がり続けている。なので、夕方など全体的に光量の足りないところでは、イメージサクル内であってもトンネルになる。

ピンホールカメラの焦点距離と画角

 焦点距離と画角をフィルムサイズごとに整理してみた。フィルムサイズの下の欄は対角線距離(mm)。ついでに左側に、焦点距離に応じた最適針穴サイズと、その時のF値を併記した。また、35mmの標準的なレンズとピンホールカメラの代表的な値を太字にした。

 この表をみると、ピンホールカメラの画角は90°以上、35mm換算で焦点距離20mm以下の超広角の写野を狙っていることがわかる。ピンホールカメラの非日常感はこの超広角画面から受ける印象が大きいのだろう。(狭い画角ではただのピンボケ写真にしか見えなかったりするので。)また、解像度はフィルムサイズが大きくて、焦点距離が長いほど良くなる。なので、フィルムサイズが大きいほど受ける印象も大きくなるのだろう。

 昨日作ったHolga改造ピンホールカメラは焦点距離が45mmなので、画角が83°。35mmに換算して25mmとなるので、ピンホールカメラとしては若干物足りない画角となる。Holgaを普通改造する時には、レンズ台座を外した、焦点距離30mm程度にするので、これであれば画角はなお解像度は106°と超広角の範囲に入る。

 35mmフィルムのレンジファインダー機のフランジバックは28mm(Leica M/L)前後なので、画角は75°程度となる。したがって、画角的には物足りない絵となる。いまではミラーレスのデジタルカメラを使ったピンホールカメラも見かけるが、フランジバックが18mm前後のようだ。しかし、APS-Cサイズのものだろうから同じと言える。もしフルサイズであれば、超広角の範囲に入る。なので一般的には、中判や大判フィルムを使ったピンホール写真の方が、超広角を利用した撮影が可能だ。

以下の比較記事を見ればその差ははっきりしています。フィルムの方はそれだけで作品になってますが、デジタルはボケた写真にしか見えません。
フィルム(MIA 6×6 20 mm)とデジタルのピンホールカメラの比較

印象的なピンホール写真は超広角と長時間露光から生まれてくるのだろう。

画角が50°程度が各フィルムサイズの標準レンズ。

MIAというピンホールカメラ屋さん(英国)

YouTubeを見ていると日本のストアでは見られないピンホールカメラが出てくる。MIAというピンホール屋さんもそんなところ。3Dプリンターでプロト版は作っていたようだ。6×6の焦点距離10mmとかもある。画角が151°とかなる。135mm換算だと数mmの世界。本体1万2千円ぐらいで、送料含めて1万円台だろう。手始めは6×6の焦点距離20mm(画角126°,135mm換算で12mm程度)ぐらいだろう。4×5の35mmも2万円そこそこで手に入りそう。

Holgaをピンホールカメラに改造してみた

 ピンホール化するには一番お手軽とされるHolga120をピンホールにしてみた。普通はレンズの台座は残さずに本体に直接ピンホールレンズを付けている。その場合の焦点距離は30mm程度になり、画角としては105°程度、35mmだと17mmぐらいの感覚。レンズ口径は0.2mmが最適でF150ぐらいとなる。

 しかし、広角はZero2000がすでにあるので、台座の部分を残し焦点距離45mm程度のピンホールカメラにすることにした。この場合の最適ホール口径は0.24mmなので0.25mmを使うことにした。F値は180程度となる。35mm換算で25mm程度。超広角ではないが狭くもない。また、台座を使うとちょうどレンズキャップの口径が、レンズを取り去った後の口径にちょうどあうので、特にシャッターは必要ないと思ったが、絞り機構の穴を閉じてしまって、シャッターにすることにした。このレンズ台座の下に三脚の穴があり、これも手をかける必要がなく便利。
 特にトラブルもなく改造できた。やはりHolgaにお手軽に改造できるカメラだった。仕切りを替えれば6×4.5にも簡単に変えられるので便利かも。最後に裏蓋にモルトを貼って、平面性の強化をやってみた。

 なお、ピンホールの横に、本来のレンズのストッパー用の棒が残っているが、計算上は画角には入らないと思われる。試写次第では取る必要がある。なお改造したHolgaは、電池が液漏れを起こしていた、プラステックレンズ版。

【追記:2024/05/02】背板にモルトを貼ってみたが、フィルムが巻けなかったので剥がした。

「世界Pinhole写真の日」ということで

 今日はピンホール写真の日ということで近場を回ってみたが、2重露光を2度もやってしまい、撮り高が少なかった。

【追記】上記のウエスタンというフィルターはやり過ぎ感があったので、若干赤みを加えたものに修正しました。

今日は「世界Pinhole写真の日」だそうだ

 今まで知らなかったけど、4月の最終日曜日は「世界Pinhole写真の日」だそうだ。WEBを見ていたら、ピンホール写真を好きな人は2つのタイプがあって、「ピンホールカメラを作ることが好きな人」と「ピンホール写真を撮ることが好きな人」だ。WEBを見ると最初のカテゴリーの人のページが多いが、Youtubeになると、後のカテゴリーの人が多い。

 ピンホール写真を始めて実質1週間も経ってないけど、「ピンホールカメラを作ること」に興味の無い人は市販品を購入すれば良いだけだ。市販品は失敗も少なく、典型的なピンホール写真が撮れる合理的な仕様に仕上がっている。価格も紙製なら数千円、木製で数万円程度。

 例えば、最適な穴のサイズは焦点距離(フィルムから穴の位置までの長さ)で決まっている。式で書けば、 穴の直径=0.036xroot(焦点距離)
 焦点距離が25mmの場合、最適な直径は0.18mm。F値は=焦点距離/穴の直径=25/0.18=138となる。

 これに合わせて設計されているのが、Zero Image社Zero2000(6×6用)だ。なので、工作はいやだけど、ピンホール写真には興味があるという人は、これが一番のお薦め。間違いがない。入手には、このWEBから直接購入したり、ヤフオクの中古も便利。代理店もあるが、やはり、直接買うよりお高くなる。

 Zero Image社では他にも135用から8×10用まで各種のピンホールカメラを提供している。いずれも数万円だ(円安が痛手だけど)。例えば、4×5用は25mm幅のフレームを重ねることで、25mm,50mm,75mmの焦点距離を実現し、ピンホールもロートレックでそれぞれの焦点距離に適したものが使えるようになっている。また、既存の4×5カメラを使った場合1kg以上になるが、これで1段なら200g以内に収まるので持ち運びも容易。(早速注文してしまった・・・。)  また、6×9用も別ルートで入手予定。こちらは40mm(最適ホール=0.23)なのにピンホールは 0.18mm のままだ。こちらは入手できたら、0.25mmとピンホールを交換予定。

 ピンホールカメラに数万円もかけるのはどうかしていると思うだろうけど、一回の撮影で「ピンホールの沼」というのにはまってしまった。ピンホールカメラでは、従来の写真と別のカテゴリーの写真が生まれる。

フィルム(120,4×5)を買い増す

 円安が加速してもうすぐ160円。少量ながら120と4×5のフィルムを買い増した。120はヨドバシのKentmere100の840円。4×5は一時期無くなっていたがかわうそ商店のFormapan100(8900円/50枚)。ほとんどの4×5フィルムが400円/一枚になった現在、180円/一枚で買えるのは貴重だ。4×5は一日せいぜい数枚しか撮らないが、5枚撮って1000円と2000円はえらい違いだ。Formapanは長時間露光には向かないが、AcrossやDelta100のストックもあるから大丈夫だ。

 なお、白黒フィルムは20年ほっておいた経験上、冷蔵保管していればほとんど劣化はないようだ。カラーリバーサルもいっぱい残っているが、まだ撮っていないので状態は不明。

Formapanは長時間露光には向かない

 ピンホールの露光時間の計算にFormapanを入れようとデータシートを見たらTriXより悪い特性だった。例えば100秒の露光時間が必要な場合、4段あける必要がある。時間にして16倍。さらにグラフを見ればわかるように、指数関数よりさらに悪化していることがわかる。なので、ピンホールに使うにしても、100秒(約2分)⇒1600秒(約27分)ぐらいが最長だろう。なので、最初から使うのは諦めたほうが無難。たぶん昔ながらの薬剤の処方なのだろう。しかし、長時間露光には向かないというだけで、昼間の短時間露光の撮影は別な話になる。

 データシートを見ると計算値で10sec(EV=11)の場合必要な露光時間が80秒。EV=10では計算値で約20秒、Formapanでは約300秒(5分)程度となる。なので、ピンホールで使うのであれば、屋外での使用が前提となる。

ピンホールカメラ プロジェクト(7)

今年の世界ピンホールの日(4月の最後の日曜日、2024年は4月28日)を前に、ピンホールのページWorld of Pinholeを追加してみました。Zero2000で撮ったものをSilkypixの既存のフィルターでレトロ風にしてみました。Silkypixで光線引きも修正してみました。

【追記】上記のウエスタンというフィルターはやり過ぎ感があったので、若干赤みを加えたものに修正しました。なおCanonF1の20mmで撮った画像はこちらに。

ピンホールカメラ プロジェクト(6)

 Zero2000で撮って、画像の回りをトリミングしただけで調整無しのものを下に貼った。12枚とも露光時間は計算通りであっているようだ。②枚目は光線漏れが大きかった。(巻き直しによるもの。) ①③④番目は光線もれが目立たないようにトリミングしている。観覧車はいつもは止まっているのだけれど、この日はお客さんが来てちょうど回り始めてしまった。なので若干ぶれている。フィルムだと⑫の室内も結構写っている。フィルムはKentmere100 (120) D-96 11.5分。Kentmere100 はコントラストが高くないのでピンホール写真向けのフィルムだ。

各露光時間(上の右から左へ)
露出の計測はGR Digital IIによる。
晴れた日はEVが14以上、露光時間が1秒以下となるので、UVフィルターが必須。
2秒以上に伸ばした方が誤差が少ない。
国分寺跡
①F3.5 1/810 Ev=13.25 ⇒ 2.3sec/F138
城山公園
②F7.1 1/760 Ev=15.25 ⇒ 0.5sec x UV4 = 2sec
③F7.1 1/760 Ev=15.25 ⇒ 0.5sec x UV4 = 2sec
④F7.1 1/460 Ev=14.50 ⇒ 0.8sec x UV2 = 1.6 ⇒2sec
⑤F7.1 1/560 Ev=14.75 ⇒ 0.7sec x UV4 = 2.8 ⇒4sec
高座神社
⑥F3.5 1/100 Ev=10.25 ⇒ 32sec
⑦ 同上 32sec
⑧ 同上 32sec
⑨F3.5 1/73 Ev=9.75 ⇒ 50sec
⑩ 同上 50sec
⑪F3.5 1/270 Ev=11.75 ⇒ 8.6sec
自室
⑫F2.4 1/40 Ev=8.0 ⇒ 3.8分

露光時間については、ピンホールカメラの露光時間の目安を参照。

ピンホールカメラ プロジェクト(5)

 Zero2000とCanon F1に20mmを付けて、Zero2000の試写に。ピンホールカメラといえば観覧車ということで、国分の城山公園に行ったが、ちょうど市内(鹿児島県で市内と言えば、鹿児島市)の女子中学校の遠足(?)のお昼休憩と重なってしまって落ち着いて撮れず。とりあえず、学生さんにはカメラは向けないことに。
 もう一箇所の高座神社は、今日は掃除する地域の方々もおらずゆっくりと撮れた。早速現像したけど、とりあえず写っている感じ。しかし、最初の方のコマは、赤窓にでるフィルムカウントの数字の見方がわからず、何回か巻き戻したこともあって、光が入っていた。後からは暗袋でやったのだけど、最初ののが効いたらしい。120は何度も使っているが、裏窓で枚数を確認するタイプは初めてだった。
 ここらで撮るためには20kmぐらい歩かないといけないので、機材の重さもあって大変だった。

とりあえず、コンデジの城山からの眺望。2,3日前の72時間で鹿児島空港での春の別れをやっていたけど、途中に入った夜景はここからの夜景だった。真ん中にあるのは京セラの新しい工場。本体は左側の画面の外にあり増殖中。

ピンホールカメラ プロジェクト(4)

 とりあえず、印画紙を使ったピンホールカメラを試してみたが、印画紙では明暗のはばが狭すぎて、やはりフィルムを使う必要がありそうだ。しかし、4×5のフィルムは高すぎるので、中版120のフィルムしかない。135mmはやはり解像度に限度がありありそうだ。

 またF値を小さくしてシャッター速度を下げるのと、画角を広げるためには、焦点距離は短い方が良いとのことで、中版の場合は30mmぐらいが適当だろう。30mmに適当なピンホールの直径は0.2mmぐらい。そう考えると、結局Zero2000のスペックに戻ってしまうことになる。いろいろな試行錯誤の結果できたのがZero2000なのだろう。

 エボニーに67のフォルダーをつける手もあるが、重くなるのが欠点。まだ一度も撮っていないので、Zero2000の試し撮りをやってみることに。