Double Xの粒子(グレイン)も消えてしまう

 デジタル写真も、ノイズを載せてフィルム写真風に見せる現在、フィルム写真の粒状性を、フィルムの銘柄、現像液の種類、現像方法などで、アナログ的に制御する古き良き時代は終わっているのかもしれない。

 ノイズを消して、デジタル写真で使っているXXフィルム風ノイズを入れれば、銘柄を替えられることになる。

古写真復元

ノイズ除去技術を使えば、簡単に古写真も現代の写真として蘇りますね。
これはPhotoDirectorでノイズを除き高画質化して、Silkypixで自動補正した写真。
写真は敦煌の莫高窟で発見された文書を1908年にロウソクの灯りを頼りに調査しているペリオさん。積まれている文書は900年代の始めに洞窟に隠された文書。この部屋の入口は土で埋められて壁になってました。
ただ、右上の部分は暗いのでうまく出ていません。原紙を使えばもっと良くいくでしょう。

Mamiya-16 Automaticによるカラー画像の調整例

 早くからいろいろなことに挑戦され、私も参考にしているPHOTOWALKさんの承認を得て、WEBに掲載されているMamiya-16 Automatic(16mm)による「あじさいの花」の写真をPhotoDirector 365で調整してみました。なおそれぞれの機能は0-100%で加減できますが、今回は全て100%で処理した場合です。その他は手を加えていません。なお、16mmのフィルム上の画面(14mmx10mm)は35mmフィルムの1/6です。

 左がオリジナル、右が各種調整後(全て100%で処理した場合)の画像です。それぞれの調整後の画像は下に添付しています。なお使用フィルムはVsion3 50Dです。

Before                          After (By Mamiya-16 )

ちなみに30%ずつ処理した場合がこちらです。こちらがより自然です。

オリジナル

自動ノイズ除去(100%)後

自動色調調整(100%)後

さらに自動カラーエンハンス(100%)処理後

フィルム写真のノイズ除去は話題になってない

 検索してみても、フィルム写真でのノイズ(粒状感)除去は話題になっていない。その理由を考えてみた。

①フィルムの粒状感は銘柄と現像液で決まる。フィルムユーザは自分の好みに合う粒状感の組み合わせを見つけそれを使い続けているので、そもそも、ノイズ除去/調整の必要性を感じない。

②ノイズ除去技術はデジタルカメラのノイズ対策として開発されてきたもので、対象画像はRAWファイルが基本。なので、フィルム写真には使えないと思っている。Jpgファイルにも使える高性能の製品があることを知らない。

③レタッチソフトのノイズ除去機能を使ってみたけど、操作が面倒で、効果もノイズ改善のレベルでいまいちだった。

④普通にフィルム写真をやっている人は、110やハーフ写真での粒状性の悪化は理解しているので、そもそも手を出さない。なので、16mm写真の粒状性向上などの願望は起きない。35mmからフィルムの粒状性を問題にする人は、フィルムの広い中判方向に進む。

 昨今のフィルム価格高騰で、粒状性の良いフィルムは手の届かない価格になってしまった。また、ダブルXの写真ユーザーへの販売停止なので、粒状性の悪い低価格のフィルムを物色する必要が出てきた。これまで現像が済んだフィルムの粒状性を改善する手段はなく、フィルム写真のノイズ除去技術が注目されるのはこれからだろう。

110カメラの粒子だらけの画像に失望した人へ

 110フィルムが現像から返ってきて、粒子が粗いのは予想していたけど、ここまでとは思わなかったという人も多いかもしれません。この写真はLOMOMATIC 110を使いOrca110 B&Wのフィルムで撮られたもので、Youtubeの画面からのスクリーンコピーです。小さな画像ではそれほどまでではありませんが、クリックして拡大すると粒子で満たされていることが分かります。WEB用の写真としては使えません。それでも半世紀前に流行したのは、小さな紙にプリントしていたからでしょう。

 しかし、この画質を理由に110カメラを捨ててはいけません。これからCyberlink社のPhotoDirectorのワンクリックでノイズを除くと、元が良いので、インパクトのある写真に変身します。これは同社の「MyEdit」というオンラインソフトでも試せます。

 さらにPhotoDirectorで画像をエンハンスすると、地面のタイヤの跡まで見えてきます。もはや、110カメラで撮られた写真とは思えません。

ただしPhotoDirectorもソフトで補正しているために万能ではありません。小さな花の集まったものは、隣の花が合体してしまうこともあります。

粒子出まくりのFoma400から粒子を消してみた

 フィルム写真の世界では、超微粒子のフィルムや現像液の開発で、長年微粒子化の努力が続けられてきた。しかし、ノイズ除去技術はそれをワンクリックでやってしまう。粒子が粗いことで有名なFomapan400の写真から試しにPhotoDirectorで粒子を消してみた。とりあえず粒子が消え、すっきとしたレタッチ前のベースの写真になる。Fomapan400の粒子を楽しんでいる人もいるだろうが、安いという理由で使っている人には朗報なのではないだろうか。Double XをKodakが売らなくても、Fomapan400で無問題ということになりそう。趣味でやる分には、粒状性でフィルムや現像液を選ぶ時代は終わっているのかもしれない。しかも、カラーネガの粒状性まで修正できる。
 昔フィルムだけの写真の頃は、スキャンしただけの修正なしの画像とか書かれていたけど、今のスキャナソフトはスキャンするフィルムの銘柄を選ばせ、それぞれのフィルムに合った方法で自動修正して出力してくるのだから、「レタッチ無し」はあまり意味無いことだろう。

 結局、安いフィルムと現像液の最適組み合わせでネガにして、粒状性をソフトで制御し写真データを作り、プリントが欲しいときには、エプソンのプリンターで和紙に出力とかいうコースになるのだろうか?

Before (ネガスキャンの生出力) クリックして拡大すると違いは歴然。

[Canon nF1/nFD 24mmF2.8, Fomapan400 (320), SPD 1+1 11.0分@20℃]

After (ノイズ除去後)  ザラザラな質感が消えています。

 ただし、ノイズ除去の程度は0から100%で調整ができる。作例は100%の例。
 現代は、デジタル写真のカリカリ感が嫌われてフィルム写真風のノイズを載せる時代だから、ノイズを残して、ザラザラ感を保った方がよいのかもしれない。

フィルム写真からノイズ除去して得られるもの

 35mmカラーフィルムでも空に粒子が出てちょっとと思う時があるが、このソフト(PhotoDirector 365)はその悩みを消してくれる。これは、ノイズが出てしまった例。このソフトにかけて除去すると、粒子の舞っていた空がきれいに晴れ上がる。

 また夕暮れ時には露光が足りず粒子が出やすい。これもクリアにしてくれる。

 しかし、何と言っても一番効果があるのが、フィルムの小さい110や16mmの粒子の多い写真。これはロモグラフィのサイトにある、「ありあ」さんという作家さんの110での作品(左側)からノイズを抜いて、若干暗めにした例(右側)。赤いアマリリスとモデルさんのドレスの対比が良い。作家さん達が110フィルムを使うのは、粒子で作り出される、昔の絵葉書のようなマットな質感を大事にしているからだ。なので、本意ではないと思うので、短期間に例として掲載します。 しかし、これを見たら、ある程度予想していた以上の粒子の多さから110フイルムから撤退した人達も、一考の価値があるのではないかと思う。逆に、デジタルカメラのようでフィルムで撮る意味がないと思う人もいるとは思うが。(ノイズと小石の区別がつかなくてノッペラな地面にはなっている。) しかし、左の鉢の葉のつやつや感は110で撮ったとは思えない。

 これはロモグラフィの投稿サイトにあるMinolta-16 MG(フィルム上の画面サイズは110と同じ)で撮られた写真。フィルムはVision-3 250D。ノイズはそこまでではないが、ノイズ除去と手ブレ補正をすると、デジタル写真になってしまう。事情を知らないで、どちらがオリジナルか聞かれたら、迷ってしまうぐらいだ。

 ノイズ除去技術はデジタル写真のRAW現像用に開発されたようだけど、フィルム写真を生き返らせる技術でもある。粒状性向上のために、わざわざ中判を使う必要もなくなってしまう。現状のデジタルカメラのフィルムの雰囲気を出す技術はこれの反対を利用したものだろう。ノイズ除去の技術はここ数年発達が加速したようだけど、これまでフィルムで使えなかったのはデジタルカメラ出力のRAW用が多かったから。現状の技術でさえ110の写真がこんなになるんだから、「もうフィルムでいんじゃない。」という世界になっているような。アナログの匂いは薄くなるけど。