昼間の露出設定の話

 改めて露出のことを考えてみた。

1.入射式露出計には被写体の色に起因する補正は必要ない。

 露出計には、入射式と反射式の2つの形式がある。被写体は光に照らされているが、その被写体を照らす光を直接測るのが入射式、被写体に反射された光を測るのが反射式だ。入射式は照らしている光を直接測るので補正の必要はない。しかし、反射式は被写体の色により補正が必要となる。18%グレイと呼ばれる色の場合は入射式と同じ値を示す。白色の場合は、この色を18%グレイに見せるために、2EV(2段)絞った値を示す。逆に黒色の場合は2EV(2段)開放した値を示す。
 カメラに組み込まれている露出計は構造上入射式はできないので、反射式となり。なので、被写体の色によって露出補正が必要となる。(現在のデジタルカメラでは色補正を組み込んだ露出計もあるが、その場合、補正の仕方がブラックボックスとなるので、逆にマニュアルにより露出補正をするのが困難。)
 したがって、入射式で露出を測れば、適正露出がえられることになる。その上で必要であれば、演出上の露出補正を行えばよいことになる。
 
2.フィルムの許容範囲(ラチチュード,ダイナミックレンジ)

 フィルム上にどの程度の明るさの範囲の被写体を残せるかを考えてみると、カラーリバーサルフィルムが5EV程度。カラーネガフィルム7~8EV、白黒ネガフィルム9EV程度。これに比べ最近のデジタルカメラは14EV程度もあるようだ。

3.被写体の明るさの範囲

 昼間の日の当たる場所を、入射式の露出計で測ると15EV(ISO100設定)程度。日陰では3EV低い12EV(ISO100設定)程度。なので、明るさの差は3EV程度しかない。したがって、白黒ネガを使い、晴れた日にF16&1/125sで撮れば、15±4.5EVのものは撮れていることになる。ちなみに、晴れた日のF16ルールはここから来ているのではないか。ISO100のフィルムでF16の絞りなら、1/125sのシャッタースピードとなる。ただし、地上の被写体が主体となることが多いので、実際には(15+12)/2=13.5EV程度に設定しておいて、影の被写体が主体の場合は2段下げればよいことになる。その途中は、ひなたと日が当たらない部分の面積比で決めることになる。

結局これが、ストリートスナップを行う場合の定番露出ということになる。多少ズレていたとしても、フィルム上には情報は記録されているので、再現できることになる。
実際、現像液の劣化でほぼ透明になってしまったネガでも、画像は残っていたりする。

4.具体的には

 まず撮影地で、ひなたの部分と日があたっていない部分を、入射式露出計で測る。日の強さの違いを感じたら測り直してみる。そのEV値に応じて、日なた用、日陰用とその中間の絞り/速度を決めておいて使い分ければ、あまり考える必要はないと思う。理論的は、「写ルンです」のように中間の一つの設定でも問題ないことになる。なお、当然ながらISO400のフィルムの場合は、それぞれ2EV高い値となる。
 入射式露出計が無い場合には、市販の18%グレイのプレイトに反射させた光を測れば同じ値となる。

5.「入射式は遠方の被写体は測れない」というのは間違い

 露出計の説明では、遠方の被写体まで行けないので入射式は使えないという説明があるけど、それは間違い。遠方の山にそそぐ太陽の光も、目前の太陽の光も同じ量。反射式では遠方の被写体では高くでるが、それは空の部分も取り込んでしまうため。例えば、入射式で15EVの場合でも、雲を中心に空を反射式で測ると17EVとかになる。これは雲の色が白色のためだ。したがって、露出計内蔵のカメラで、遠方の被写体を撮ると、空に引きずられて、地上の風景が暗くなってしまう。

 逆光の場合も同様で、被写体からカメラ側に露出計を向けて入射式で測れば、逆光に関係なく適切な露出が得られることになる。また、雪景色も反射式では2段暗めになるので、入射式で測るのが確実です。

【追記】反射式でセコニックに比べて高めにでるゴッセンデジシックスを、どうにか使えないか考えてみたけど、セコニックの露出計でも入射式をメインに使うのが正解かもという結果に。セコニックのスポットメータに広角(40°)の反射式露出計の機能がついていないのもこのせいかも。平均値は入射式で測るのが正確で十分ということらしい。

【追記(2025/08/24)】実際にこの方法を試してみたが、暗いところが極端に潰れるFoma400をISO400で撮ってみたこともあって、薄く揃っていない、まだらなネガとなった。適正露出とするなら、明るい部分と暗い部分の露出からその中間あたりということになるのだろう。