スナップ(露出計無し)の絞り値のまとめ

 スナップの時の絞り値の話をまとめるとこんな感じになる。

 まず「晴れた日のF16ルール」と呼ばれるものがあり、ISO100の場合晴れた日はF16で1/100。これはEv値にするとEv15となり、「快晴」の場合だ。快晴の日にこれで撮れば適正となるが、普通の晴れの日や空の少ない写真ではアンダー目の写りとなる。

 ブロッソンは晴れた日は1段下のEv値のEv14(F8・1/250s)としている。なので、晴れの日には一段下のF11ルール(F11・1/125s)が目安としては良いと思う。これを基準に、曇若しくは日影では、2段落としたEv12(F5.6・1/125s)。ISO100ではスピードは落とせないので絞るしかない。

 レンズの特性が良いとされるF8にこだわれば、F8に一段絞り スピードを1段上げて、晴れの日には、ISO100ではF8・1/250s、ISO200のフィルムでF8・1/500s。同様にISO400のフィルムは、F8・1/1000s。「晴れたらセンパチ」というのがこの設定だ。なのでF16ルールとは1段違う。F16は「快晴」の設定で、「晴れの日全般」に使える設定ではない。

 いずれにしても、『晴れた日は絞りF11でスピードは1/ISO秒。日陰や曇りは2段落とし。』と記憶しておけば、あまり外れはないことになる。露出計を使う場合は、現在の絞りと速度の設定値のEv値から0.5だけ変化したら、一段開けたり、絞ったりすればよい。

 普通のカメラでは、絞りやスピードは1段づつしか変えられないので、露出計を使ったとしても最大±0.5段の誤差がある。これが±1段に悪化するわけだが、フィルムの許容範囲に入るだろう。ただし、フィルム全体をみれば、コマごとに+1段から‐1段までの濃淡のあるネガになると思う。

【追記 2024/03/04】露出を説明する時、絞りとシャッタースピードのみで説明される場合が多い。しかし、その説明では何も残らない。上の表のようにEv値と関連させた説明でないと、頭に入ってこない。たぶんEv値は初心者には難しいとして省くのだろうが、実際にはEv値が分からない限り、適正露出が分かることは無い。一番良いのは、Ev値が表示できる露出計を持って、町をぶらついてみることだ。普通の晴れた日では、順光であればEv値は14~15(ISO100の設定で)ぐらいであることが体得できる。なので、Ev14の設定(F11,1/125sもしくはF8,1/250s)でよいことになる。アンダー目より、若干オーバ目の方が良い。ぼかしを楽しむ場合は、F4,1/1000sで良い。(昔のライカだとISO100のフィルムが必須。) また曇の日は、伊達に2段絞りを開けるわけではなく、Ev値が2Ev下がるから、2段開けているだけだ。

カルティエ ブレッソンの露出設定値

 ブロッソンの使用機材を調べていたら、「晴れていたら、速度1/125s 絞りF8(Ev値13)、距離10feet(3m)」の固定で使っていたというのも出てきた。先の「曇りがF5.6で1/125sec(Ev値=12)、晴れがF8で1/250sec(Ev値=14)」の真中の数字だ。この設定を固定して使っていたとなると、ネガのラチチュードを±2段と期待して使っていたことになる。したがって、この2つの記事の話は時期が違うのだろう。1設定の固定は「写るんです」の方式だ。

 結局手ブレを防ぐためにスピードを最低限の1/125sとし、絞りはF8が中心だったようだ。2段階でカバーする時には、暗いときには1段開け(F5.6)、明るいときには速度を1段上げ(1/250s)て考えていた。(使用フィルムはPlus-X(ISO80)と仮定して。)F8以上に絞る必要性は感じていなかったようだ。

 また、50mmレンズF8絞りで、ピント位置3mでピントが合うのは2.2mから4.4mまでしかない。ピント位置が5mで3.2mから10.7mまでカバーする。 Webの記事では10feet(約5m)としているものが多いが、1feetは0.305mなので、10feetは約3mの誤り。 16feet(5m)の場合はF5.6でも(3.6m~8m)と近くはほぼ変わらない。たぶん、10feet(=3m)は35mmのレンズの場合(ピント位置3mで、F8で1.8mから8.6m)のことだろう。なので、ピントは50mmレンズの場合は5m、35mmレンズの場合は3mに合わすのが基本となる。

 使っていた機材としてはライカIIIfでは、カールツアイスのゾナー 50mm F1.5をライカLマウント用に改造したもの。M3ではSummicron 50mm F2(沈胴)がメインだったようだ。

【追記】初期のゾナーはそもそもF8までしか無かったようだ。[Carl Zeiss Sonnar 5cm f1.5 (nickel black f8)]
 ズマリット(50mm F1.5)という情報もありますね、やはりF1.5がメインだったのか。

カルティエ ブレッソンの速写術

 カルティエ ブレッソンは、「曇りがF5.6で1/125sec、晴れがF8で1/250sec」で撮っていたと語っています。これをEv表でみると、曇りがEv=12、晴れがEv=14となります。当時のフィルムのラチチュードを±1と仮定すると、EV=15からEV=11までを、この2つの組み合わせだけでカバーしていることになります。(ここでF5.6の1/500sではなく、F8の1/250sを使っているのは、1/300sまでしかないカメラも使っていたからかもしれません。) したがって、組み合わせの切り替えを誤らなければ、適正露出との差も1段程度に抑えられていた。

 彼が使用したフィルムは明確になってませんが、コダック社のフィルムの歴史からは、1938年にPlus-x(ASA80)とSuper-XX(ASA160)発売され、1958年にTri-X(ASA250)が発売され、Double-Xから代わっています。ここで、各フィルムに対する右のEv表を見ると、Ev11~15で対応しているフィルムはPlus-Xということがわかります。これから、この2組の組み合わせに対応するフィルムはPlus-Xということになります。また、2つの組み合わせの境界は、この表からは、太陽の光で影ができているかどうかという点のようだ。

 現在彼と同じ2つの組み合わせでスナップを撮ろうとすれば、ISO100のフィルムでよいことになり、ISO400であれば2段スピードを上げて、F5.6,1/500sとF8,1/1000sでよいことになります。ISO400のネガはラチチュードが±2ぐらいなので、なお万全です。いずれにせよ、この方法であれば、露出計無しにスナップすることが可能となります。たぶん「曇り」は「日陰」も含めてと思います。

 F16は写真教室などで求められる基本のパンフォーカスの写真となりますが、F4~F5.6辺りで撮るとピントがあった被写体が主題として浮かび上がります。

ps.現在ではTri-XはISO400でISO100と比べ4倍なのに3倍と名付けられているのに疑問がありましたが、発売当時はISO80が基本だったようです。

【追記】ライカのシャッタースピードはバルナックまでは1/100s,1/200s,1/500sのスタイルで、M3(1954年)から、1/60s, 1/125s, 1/250s, 1/500sのスピードに変わっている。なので上記撮影スタイルはM3からの話。その前までは、「ASA80のフィルムで、曇りがF5.6で1/100sec(Ev=12.0)、晴れがF8で1/200sec(Ev=14.0)」だったのかもしれない。この場合もEv=11からEv=15までをカバー。

見やすいEv表

 これまで作ってみた普通のEv表は見にくいので、Ev値と絞り値を軸にして表を作ってみた。この表だと、同じEv値であれば同じ列の上下を見るだけでいい。
 例えばISO100のフィルムの場合、F16のルールだと、F16と1/125sの組み合わせが基本であり、F8と1/1000sの組み合わせから、F22と1/60sぐらいの組み合わせが選べることになる。(F32は普通ついていないので。) 曇の日は、3段落としたF5.6辺りで1/ISO秒の組み合わせが基本となりそう。その場合ISO100で、F5.6と1/125sの組み合わせでEV値が12程度。
 ISO400のフィルムでは、1/500sのところを斜めに動く。Double-Xも同様に1/250sのところとなる。結局、シャッタースピードが1/ISO秒で固定であれば、絞りを一段ずつ開けていくことになる。F16固定であれば、左側にスピードを一段ずつ遅くさせることになる。

 また、ぼかしが効くF4辺りの絞りを使えるのは、1/1000sまでしか無いカメラではEv14までとなる。したがって、晴れた日はISO400のフィルムではF4は選べないことになる。(NDフィルターを使う必要がある)

 露出計にEv値のメモリがなくても、例えばF16固定でスピードを変化させ、最適値が1/125sであれば、その時点のEv値は15となる。

曇の日のEv値

雨の止んでる合間にちょっと散歩。データを見るとISO100,F3.4,1/440sから、
Ev=log(440,2)+log(3.4,2)x2-log(100/100,2)=8.78+3.53-0=12.31。
なので、典型的な「曇の日」ということに。

そして、昨日の写真のデータは、ISO100,F6.7,1/570sから、
Ev=log(570,2)+log(6.7,2)x2-log(100/100,2)=9.15+5.49-0=14.64。
なので、典型的な「晴れの日」ということに。

Ev計算式(2)

 Evの計算式に大陸系のスピード(1/300,1/100,1/50,1/25)を加えてみた。いずれも、近いスピードと±0.3、1/3段ほどの違いがあるが、ネガなら許容範囲が±2ぐらいなのであまり変わらないだろう。
 なお「サニーF16ルール」というのがあるそうで、晴天で日の当たっている場所では、「絞りF16、シャッタースピード1/ISO秒」で適正露出が得られるというもの。Ev値の計算では、ISO100の場合Ev14.6、ISO400でEv16.6というこになり、右の表の快晴に近い値になっている。カメラの設定としては、ISO100で1/125s、ISO400のフィルムで1/500s。日の当たっていない日陰ではこれより2~3段開くことになる。
 なおエクセルの計算式は2を低とする対数。
参考となるWEB

Ev値の計算式

 Ev値がどんな計算式で計算されているのかエクセルで再現してみた。絞りは直径に比例しているようで、Ev値としては面積に比例ということで2倍している。この表から例えば晴れた日は、ISO100のフィルムを使えばEv値=14が得られる、速度1/250s絞りF8という設定が必要ということになる。ISO400のフィルムでは2段違うので、F16となる。
 夜電球の下ではISO400のフィルムで、F2.0、速度1/60ぐらいなので、Ev値は8前後となる。ISO100に換算すると、log(400/100,2)=2を引いて、Ev値は6前後。

 HolgaのEv値は、レンズに貼ってある絞りのリングを取って改造すれば、曇の日はF8(7.5mm)・1/100sでEV値=12.7で、晴れの日は稼働絞りF13.8(4.3mm)・1/00sでEv値=14.7なので、ISO100のフィルムでも曇の日にも撮れるようになる。ISO400であれば、さらに暗いところまで撮影可能となるが、快晴の日には向かない。もう少し狭い絞りリングを付ける必要がある。Ev値が測れる露出計があれば適当なフィルムと絞りが選べる。

10を底とする指数で、ISO100のフィルムを使って晴れた日(Ev=14)に
1/250sとF8で写真を撮った場合のEv値を計算すると以下となります。
 Ev(晴れた日) = log10(100/100)/log10(2)+log10(250)/log10(2)+log10(8)/log10(2 )x2
        = 0.0+ 7.97+6.00=13.97

最近のディジタルカメラの出荷台数

 2023年のカメラの出荷は単価のUpで売上は5%程度伸びたが、台数は4%程度減少したようですね。しかも、この円安を考えると$ベースでは落ち込んでいるのでしょう。合計では800万台を割り込み772万台とのこと。レンズ交換式では一眼レフの落ち込みをミラーレスで補って若干伸びてますが、2019年の824万台にくらべ2023年は599万台と回復する見込みは無い模様ですね。スマホに食われたディジタルカメラには明るい未来はなさそうです。最近は新しいアナログフィルム風フィルターとかがニュースになるようでは、ほぼ末期症状に近いような。そもそも20年来のAPSサイズがいまだに存在している時点で進化していない。

 2000年代初めの最後のアナログカメラブームの頃は、2,30万出せば、M6とかハッセルとかの新品が買えたけど、今どきのハイエンドのデジカメはその倍はする。3,4年で陳腐化する機種にそれだけ出すのは、商用ベースの人しかメリットはないだろう。メーカは計画的陳腐化だけが生き残る道なんだろうけど。

 携帯にカメラが搭載されたのが1999年。iPhoneの発売が2008年。携帯がスマフォに置き換わったのが2010年以降。ということで、デジカメと携帯はまだ共存できていたけど、1000万画素を超えるiPhoneが出てからデジカメが売れなくなったのが、グラフを見ればわかる。この20数年はカメラ産業にとって激変の時代だった。また、往年の写真雑誌も役割を終え休刊していった。

 さらに最近のフィルムの高騰により、フィルムの本数が減っていることにより、DPEで採算が取れる状況ではななくなってるでしょうから、DPE料金の値上げや、町のDPE屋さんの減少は避けられない。残るのは大手のショップだけになるのでは?

 いま、写真に興味がある人の形態を別けると、こんな感じか?
①最新のディジタルカメラに数十万投資できる層
②コンデジで撮ってる層
③スマフォで撮っている層
④高いフィルムと現像料金でも、撮る本数が少ないからやっていける層
⑤シネマフィルム&長巻フィルムと自家現像で本数をこなす層
 結局写真産業にお金を落とす人は増えそうにない。

TAXONAと手ブレ

 初撮りでは低速シャッターの時に手ブレのコマが多かった。このカメラは軽く(364g)、シャッターボタンを押すのではなく、回すタイプなので、カメラ自体が動いてしまう可能性が高い。シャッターを押すのに違和感もある。幸い今回入手したTAXONAはシャッターレリースが付くタイプなので、手ブレ防止用に、短いレリーズはないかと探したら、ローライコード用に希望するものがあった。ローライコードもシャッターボタンではなく、TAXONA同様回すタイプなので、手ブレが起きるのだろう。3千円と高いけど試す価値はありそうだということで、早速オーダしてみた。

 Robotは重量が倍あるので、手ブレの問題は感じなかったが、その分普段使いには重いということになる。TAXONAはスナップ向きということだ。

【2024/02/11追記】上のレリーズ届いたけれど、TAXONAにはサイズが小さすぎて、シャッターにとどかず残念ながら使えませんでした。スローの時には、普通のレリーズのケーブルが短いものを使うしかなさそう。

ボタン電池の電圧(テスター導入)

 持ってるFTbなどは、カメラ側のバッテリーチェックが働かないので、テスターを買って見た。値段も千数百円であまり考える値段でもない。バッテリを測ってみると、LR44やSR44は1.55v前後。PR44は1.4v。LR44もへたってきたものは1.4vに近いものがある。全然だめなのは1.2v以下の感じ。これで、気分ではなく、電圧の数値で判断ができるようになった。
 SR43から電圧を変換するアダプタでは正常な電圧値を示さず、テスターの内部抵抗などの問題があるのかもしれない。いずれにせよ、水銀電池の代替えはPR44で十分。寿命もそんなに短くはないみたいな感じではある。今度記録してみないと。

久しぶりの体重比較

久しぶりに手持ちのカメラの体重測定。(電池無しでの状態。(*)は前回より追加。)
やはりRobotは、小さいくせに結構重い部類。

機種 フィルムタイプ コマ サイズ 重量(g)
Ricoh GR1s 135 36x24 180
Contax T3 135 36x24 235
Rollei A26 126 30×30 290
Konica C35 E&L 135 36x24 350
(*) Taxona Tessar 37.5mm/F3.5 135 24x24 364
Konica C35 Flashi matic 135 36x24 375
Rollei 35 135 36x24 380
Mamiya Sketch 135 24×24 440
Bessa-T+35mm/F3.5 135 36x24 590
(*) Konica I型 Hexar 50mm/F3.5 135 36x24 592
Leica IIIf+35mm/F3.5 135 36x24 640
(*) Robot Star Xenar 38mm/F2.8 135 24x24 664
Contax Aria+35mm/F2.8 135 36×24 745
Leica M2+35mm/F3.5 135 36×24 765
Contax S2b+35mm/F2.8 135 36×24 850
Canon FTb+nFD35mm/F2 135 36×24 1040
Contax RXII+35mm/F2.8 135 36×24 1090
Canon nF1+nFD35mm/F2 135 36×24 1130
SONY DSC-T30 デジタル 165
Ricoh GR Digital 2 デジタル 200

FTbボディ交換(2台目)

 先月FTbの巻き上げが壊れたときに、交換用に動作OKでヤフオクで2000円で調達したFTb。中身を確認すると、プリズム腐食、TOPへこみ、フィルムカウンタがリセットしない等の問題を抱えていたため諦めて、予備のFTbとボディ交換をした。

 ヤフオクのFTbはほってあったが、プリズムが1個余ることから、今回TOPと併せて前の予備機から交換してみた。カウンターのリセット不良は、メモリ盤にへこみがあったのが原因で、平面に戻したら、リセットするようになった。一点露出計の動きがおかしかったが、今日再確認したら、プリズムを固定するときになくしたネジが隠れていた。ネジを取り出して露出計もOKに。これで予備機も復活した。

FTb修理不能品のボディ交換

 巻き上げができなくなってしまったnFTb、二軒めの修理屋さんでも部品交換はできず、ボディ交換の見積もりが上がってきた。流石にボディ交換なら自分でもできるので、修理不要で引き取った。最初の修理店でも言われていたが、FTbで巻き上げ部品のスプロケットが壊れた場合、手の施しようがなく諦めが肝心ということに。高くついたセカンドオピニオンだった。
 そこで、ヤフオクでドナーを見つけるのはリスクが高いので、外見に難がありほとんど使ってなかった1号機のボディに移植してみることにした。交換したのは、TOP、底板、セルフタイマー、それにプリズムももう少しで腐食し始める段階だったので、これも替えてみた。これで2号機がどうにか復活した。