ピンホール露出時間あんちょこ表

 最近使っているのが下の露出時間のあんちょこ。これはZero2000(F138)でケントメア100の場合。真中の列がフィルター無し、右の列がY2フィルターの場合(ISO50で計算)。F=150ぐらいでは晴れた日は1秒前後なので、Y2フィルターを入れたほうが2~3秒となり誤差も少なくなる。また、1秒以下だと露出時間をコントロールできない。Ev=10以下だと、分単位の撮影時間となるので、Y2フィルターは外すことになる。

 例えば、EV=10ぐらいだと、計算値では19秒だけど、フィルムの特性から40秒の露光が必要。イエローフィルターをつけていると、計算値は倍の19秒の37秒だけど、フイルム特性の補正から95秒の露光が必要となる。単純に40秒の倍にはならない。 

 具体的な使い方は、まずコンデジ(GR digital II)のISO100固定で同じ方向を撮影し、F値とシャッタースピードから、右の欄のシャッター時間が得られる。Ev値も確認できるので、間違えることはない。GR digital IIは設定で、256分割、中央、スポット測光とか選べるが、基本は分割平均測光だ。コンデジの焦点距離は28mmなので、画角で2/3程度はカバーしていることになる、周辺部はどうせ減光するからあまり関係ないようだ。これまでのピンホールの撮影で露出を外したことはない。逆に測光角が狭い露出計だと、向ける方向で値が違うので、20mm以下の超広角撮影では迷ってしまうだろう。

 夕方まだ明るくてもEv値が思ったより小さいことがある。これは瞳孔が開いているためだろう。特に夕方は、人間の感覚は誤差が大きいのであてにならない。

【追記 2025/01/22】Y2フィルターだと1/3段しか減光しないので、ここで一段減光するのはYA2(オレンジ)フィルターの場合。

ハッセルのピンホール化

 せっかくハッセルのボディキャップを仕入れていたので、ピンホールカメラ化をしてみた。焦点距離は75mm(35mm換算で40mm程度)ぐらいであまりおもしろそうではないが、近接撮影に使えそうな気がして作ってみた。遠景ならファインダーが要りそうだけど、近接ならどうにかなるだろう。0.3mmのピンホールを付けてF250ぐらいとZero2000なんかと比べると一段暗い。ハッセルのボディキャップには中央に取手がついていて、穴をあけるのが大変だった。

ハッセルにはボディの中にミラーがあるので撮影手順が面倒だ。
①フィルムマガジンのプレートを抜く。
②ミラーをアップする。
③ピンホールのカバーを外して撮影。カバーをつける。
④シャッターを切る。
⑤フィルムを巻き上げる。
⑥マガジンのプレートを刺す。
 連続撮影ならプレートの抜き差しは要らないが、これの繰り返し。2重露光の心配はないが。。

【追記】
①ピントグラスを外せば、ミラーに前方が映るので、プレートを抜く前に構図を決めれば、ファインダーは不要。
②画角は上下・左右それぞれ40°づつで、1m離れたところからは、70cmx70cmぐらいが写ることになる。10cmぐらいでほぼ等倍。

ピンホール写真で作品を残すには

 ピンホール写真/カメラの特徴としては、①近傍から遠方まで全体にピントが合って、コントラストが弱い。(ソフトフォーカス)②超広角の撮影が可能③長時間露出(動くものは写らない)などがある。これらの特徴を活かした作品を作るには、中判以上のフィルム写真/カメラが、解像度も上がり、階調も豊かで最適と思われる。

 35mmカメラが適さないのは、フランジバッグが30mm程度あり、超広角を得ることが難しいからだ。超広角を得るには、凹みレンズの工夫が必要となる。28mmの普通の画角だと、ぼやけた写真ができるだけで発展性がない。同様の理由で、デジタルカメラも適さないことになる。デジタルカメラではASA値を上げて、短時間の露光で撮影することができるが、長時間露光の利点を活かさないことになる。少し前までは、カメラキャップにピンホールをあけたレンズも市販されていたようだが、たぶん上記理由で、今は製造終了しているようである。またピンホールにより、CCDにゴミが付着する問題もあるようだ。しかし、ストリートスナップなどでは、抽象的な表現となり、また人物が特定できないなど、現代の肖像権の問題をクリアできる表現方法ではある。ただ、大きなフィルムを使った解像度の高いピンホール写真とは別な世界だ。

 あと、市販品を買うか、自作するかについては、ホルガを改造する場合でも合計で1万円程度のカメラ、材料や工具が必要。市販品は2万円程度から。原理を知るには自作も大事だけれど、作品を残すことが目的であれば、長期間使用できる焦点距離が25mm前後の市販品が便利だ。また、ホルガには光線漏れ等の固有の問題もある。ピンホールカメラは空き缶などを利用して作ることもできるが、ある程度ピンホールカメラの構造の理解が必要だ。

 ピンホール写真の良さに惹かれた人たちは2000年前後から作品を作り始めてきているが、スマホで誰でも簡単に高画質の写真を撮ることができ、また、ガチガチの高解像度の写真が嫌われるようになった現在、ピンホール写真/カメラを試してみるのもよいのでは。時間を撮れるピンホール写真は、民俗、歴史、地方の風物などを記録するのに適した方法とも考えられる。

【追記】 ピンホール写真家の田所美恵子さんの「About my Pinhole Photography」を読むと、針穴写真にはレンズのような解像度は期待できないので、よりシャープな画像を得るためには、なるべく大きなフィルムが望ましいためカメラが大きくなり、屋内の静物には8×10、屋外での撮影には4×5の手作りカメラを使うとあります。写真家のシャープなピンホール写真の秘密は4×5のネガにあったわけです。

 高い建築物を近距離で撮影するためには、大判カメラにあるような、シフト(ライズ)の機能が必要だ。ピンホールカメラでは、穴をセンターより上側にあける必要がある。こうすることで、カメラを上に見上げたことと同じ効果がある。何cm上にあけるかは、焦点距離との関係になる。例えば45°見上げるには、焦点距離とおなじ分だけ上にあける。同様に下にあけた場合には、カメラを下に向けたのと同じ効果になる。市販品の場合の問題はこのシフトした穴をあけたものが少ないことだ(RSSとONDUの一部のみ)。自作の場合、最初から考えておけば簡単につけられるメリットがある。同様に左右に穴をあけることで、右や左を制限した写角で撮れる。(ただし、横の穴は、基本は横アングルでの撮影用だ。)市販品でのライズの角度は30°~40°程度のようだ。焦点距離20mmで15mm前後、50mmで35mm前後。

 ピントに関しては、カメラから10cm先のものと、10m先のもの、100m先のものが同等のピントがきていることになる。レンズで近傍のものを撮ったときには、遠方のものはぼやけて見えるので、ピンホールでは違った表現ができることになる。

Zero 6×9の試写

 今日はまともな三脚を背負ってZero6x9の試写。最初の撮影場所でレリーズを落としてしまい、次の撮影地点から2km引き返して、往復4km、1時間のロス。しかし、やはりしっかりした三脚だと、ゆっくり撮れる。帰って現像しようとしたらD-96が200mlしかなく断念。ロジナールを1+50で、15分@20°。ちょっと濃いめな感じだった。

 今回は6×9で全8コマ、ダブりもなく撮れていた。やはり撮影後すぐにフイルムを巻くことが大事なよう。最初のコマは電車が通過中だけど、7秒ではさすがに止まってくれない。
 Zero 6×9は焦点距離40mm、画角は105°程度で35mm換算で17mm程度しかないが、レタッチすると周辺減光も大きい。被写体が大きいせいか、もしくは現像液のせいか、画像もこれまでのものより解像度がいいように思える。ピンホールのサイズも0.18mmと計算値の0.23mmより小さいが、特に問題はないようだ。張り替え用に純正の0.25mmのピンホールも用意していたが無駄だったようだ。
 今回の試写で残念だったのは、フォーマットを変更する敷居板からトゲが出ていて、フィルムを傷つけていた。Zero2000では薄いフエルトが貼ってあるが、Zero 6×9は木のむき出しだったので、やすりで滑らかにした。写真は線が目立つものは修正したが、目立たないものはそのまま。これも試写ということで。
 あとこの120のフィルムを6×9で撮ると、コマ間がほとんど無く、ちょっと困る。最初の方が10cmぐらい余っているので、裏紙のコマ番号の割り振りに余裕を持ってもらいたいものだ。フィルム上で縦が56mmぐらいに対して横が90mmちょうどあるのが原因ではあるようだ。縦横比が6x9なら1.5だが、56mmx90mmでは1.6もある。

World of Pinhole

フィルターマウントアダプター

 やはりフィルターは外付けしないと不便ということで、Zero 6×9用のフィルター取り付けアダプターをプラ板で作ってみた。とりあえず、プラ板にガラスを取り払ったフィルター枠をテープで付けた。

ピンホールカメラの周辺減光

 ピンホールカメラの周辺減光についてもう少し考えてみた。例えば焦点距離(穴からフィルムまで)が25mmの場合、光路がその倍の50mmのところでは、光量は1/4減り、2EVの減光となる。この時の角度は60°、全体では倍の120°となる。同様に焦点距離より(ルート2)倍長い所では、光量は1EVの減光で、角度は45°の倍の90°。焦点距離より(1+ルート2)倍長い所では、光量は3EVの減光で、角度は69°の倍の138°となる。
 これから、画角が90°程度のピンホールカメラでは画角が1EV内にあり周辺減光はあまり感じられないことになる。
 焦点距離25mmのZERO2000では、120のフィルム(60mmx60mm)の中心から半径25mmの所で1EVの減光となり、その外側の周辺部が少し減光する。
 また、焦点距離が10mmのMIA6x6 10mmでは、1EVの範囲はセンターの半径10mmのところしかない。周辺部は3EV以上減光していることになる。MIA6x6 20mmでは半径20mm以上で2EVの減光となり、ZERO2000より周辺減光が大きいことになる。

TAXONA2号機帰る

 スプールとケース目当てで落としたTAXONA2号機、修理が終わって帰ってきた。シャッターがシャッキっと切れている。巻き上げレバーも止まりがちだったけど、普通にもどるようになった。軸受キャップの追加で巻き上げも問題なく動いた。写りはTessarだから問題ないだろう。
 前面の革が張り替えてあり、テカテカで浮いているところもあるので、今回張替え予定だったが、手違いでできず。革とサークルカッターもあるので、自分で張り替えてみるか?

ホルガII型(30mm)の試写

 早速ホルガの新改造品の試写をやった。(仕様は、焦点距離は30mm程度、画角としては105°程度、35mmだと17mmぐらいの感覚。ピンホール口径0.2mmでF値は150ぐらい。)今回もとりあえず写っていた。ただフレアが多く、これが単に逆光が原因なのかわからない。三脚ネジ穴は接着剤でくっつけただけだったが、とりあえず、90°横にしても自重に耐えていた。
 前回画面の右上に光線引きがあったが、これはたぶん、右手でフィルムを巻き上げる時に、左手が裏蓋を押しているために、プラスティックの裏蓋が変形して光が入っていたのではないかと思う。今回は四隅に遮光テープを貼ったので光線引きはなかった。
 また前回は手ブレがあったので、今回はコースターに黒いフエルトを貼って、簡易シャッターにした。まずは、コースターをかぶせた状態で本体のシャッターを開き、コースターを動かすことでシャッターとした。これで手ブレは無くなった。本当は「しゃもじ」がいいのではないかと思う。雨風でゴミがついていたけど、「九尾の狐」はまだ健在だった。

下の写真の撮影中(7分半)にカメラを気にしてくれた参拝者が一組ゆっくりと通ったけど、思った通り写っていなかった。太陽は背中側なので順光なのだけれど、暗い(Ev=7.5)からか、太陽の光の線がはっきりと写っている。露光時間が18分程度に伸びるので、流石にイエローフィルターは外した。フィルターをカメラの中に置く場合は注意が必要だ。

このぐらい焼き込んだほうがいいのかもしれない。

これがコンデジでの写真。三角コーンが目立ってます。

画面いっぱいに撮るにはかなり寄らないと

 ピンホールカメラでは120°近い画角があるので、画面いっぱいに撮るには、かなり寄って取る必要がある。例えば、この前撮った鬼瓦が思ったよりも小さく写っていて驚いてしまった。そこで、どのくらいまで寄ればよいのか考えてみた。

 とりあえず、画面いっぱいと言っても、計算しやすい90°の画角になるぐらいを考えてみた。例えば撮るものの高さを2m、撮る位置を1m高のところとすると、1m離れた所から取ると、上下が45°づつでちょど90°となる。したがって、撮るものの高さの半分までよれば、90°の画角になる。高さ1mの石像は50cmまで寄る。なので、30cmぐらいの小物は15cmぐらいまで寄らないと、画面いっぱいには写らないことになる。

ピンホールカメラの製品(6×6,6×9)比較

 中判用のピンホールカメラの比較表を作ってみた。これから、6×6、6×9ともに、大半のカメラは2Ev落ちてしまう画角120°(35mm換算で12.5mm)を意識して設計しているようだ。これから外れるMIA 6×6 10mmは、画面の回りはほぼ黒くなるはずで、トンネル効果を前提にした画作り用なのか。ただし、120°で2Ev落ちといっても、平均光の場合であり、外側に光源があれば関係ないことになる。また、Zero6x9やONDU6x9は、6×9の設定で103°(35mm換算で17.50mm)となり、そこまで超広角を意識させない画作り用なのかもしれない。ONDUも同じ画角ということは、超広角は6×9では持て余すのかもしれない。6×9も将来撮る可能性があるのであれば、MIA669 27mmが選択肢か。
 伝説のピンホールカメラである穴ガメも6×7判で焦点距離25mm~28mmとしており、やはり画角120°が基準となっていたようだ。一方Monbetsu 45は、焦点距離が45mmであれば6×9判で画角が96°、35mm換算で20mm程度とそこまで超広角を狙った作りではない。
 いずれにしても、中判フィルムを使うピンホールカメラであれば、焦点距離25mm前後のものが標準的なものとなるようだ。MIA社やRSS社のものであれば新品を直接買っても送料込みで2万円そこそこだろう。(円安が痛い) ZeroImageは木製でありそれらより高くなるが、ZERO2000のベーシックであれば、楽天で2万円で販売されている。ONDUも木製で4万円台となる。個人的にはRSSのシフトレンズの付いたRSS 6×6を試してみたい。Holgaでシフトを試すのもありだろうけど。

【2024/05/09】ONDUを追加して内容を改訂。

シフトレンズ(ホール)を持ったピンホールカメラ

 RealitySoSubtle(仏国)のピンホールカメラには、ピンホールを2つ持った6×6ピンホールカメラがある。センターの他に1.5cm上にもう一個ピンホールがある。20.5mmの焦点距離なので、約36°上を向いた点がセンターになる計算だ。このピンホールを使えば、6×6超広角の宿命である無駄に地面を撮ったり、上を向ける必要もない。世間にはいろいろおもしろいピンホールカメラもあるものだ。巻き上げノブが2つ付いていてどちらにも巻き上げられるというのも、間違って1コマ先に送ってしまっても修正できて便利。

ピンホールカメラはいつから映像表現の世界に?

 ピンホールカメラは現代のカメラの初期段階のものであり、WEBではそのような紹介がされている。しかし、半世紀前(今も?)にはピンホールカメラは子どもの遊び道具にしか考えられていなかった。ではいつからピンホールカメラが映像表現の世界に現れたのか?

 例えば小室三喜雄のピンホール俱楽部(閉鎖)には「ピンホール写真は年20前から作品表現の時代に入っています。」とある。なので、ピンホールカメラが映像表現に用いられ始めたのはたぶん1990年代ごろからということになる。これはデジタルカメラの導入の時期とほぼ重なり、一見矛盾している。しかし、デジタルカメラのフィルムサイズ(35mm of APS-c)を考えれば矛盾はない。35mmサイズのカメラのフランジバックでは超広角の画角は得られないからだ。中判や大判フィルムを用いるピンホールカメラでは35mmフィルム換算で15mm程度の超広角表現が普通にできてしまう。

 英国では風景写真家のSteve Goslingがピンホールカメラを使った写真集「Lensless Landscapes」を2008年に出版している。小室三喜雄氏がピンホールカメラの販売を始めたのもこのころだ。ピンホールカメラは映像表現の手段として一部写真家に広がっていったと思われる。

 ではなぜ一般に知られていないのか? これは、カメラが大企業の商業ベースに乗らないからだろう。レンズが不要で原価としては数千円しかかからないし、需要も見込めない。写真工業会から外れたところで、ほそぼそと手作りされているのが現状だ。なので、メディアへの露出が少なく、一般人には知る機会がない。また、2010年頃に広告主の企業が写真家に対してフィルム費用を経費として認めなくなったので、商業写真家も商業写真にピンホールカメラを使うことはない。

 一部の写真家が個人的な写真活動をピンホールカメラで行っているのが現状だろう。しかし、デジタルカメラもスマホにその座を奪われ、行き着くところまで行ってしまった高解像度が嫌われ、「フィルムの再現」とかおかしなことになっている現状では、アナログ再生としてピンホールカメラは広がっていく可能性はある。