ピンホールカメラの周辺減光

 ピンホールカメラの周辺減光についてもう少し考えてみた。例えば焦点距離(穴からフィルムまで)が25mmの場合、光路がその倍の50mmのところでは、光量は1/4減り、2EVの減光となる。この時の角度は60°、全体では倍の120°となる。同様に焦点距離より(ルート2)倍長い所では、光量は1EVの減光で、角度は45°の倍の90°。焦点距離より(1+ルート2)倍長い所では、光量は3EVの減光で、角度は69°の倍の138°となる。
 これから、画角が90°程度のピンホールカメラでは画角が1EV内にあり周辺減光はあまり感じられないことになる。
 焦点距離25mmのZERO2000では、120のフィルム(60mmx60mm)の中心から半径25mmの所で1EVの減光となり、その外側の周辺部が少し減光する。
 また、焦点距離が10mmのMIA6x6 10mmでは、1EVの範囲はセンターの半径10mmのところしかない。周辺部は3EV以上減光していることになる。MIA6x6 20mmでは半径20mm以上で2EVの減光となり、ZERO2000より周辺減光が大きいことになる。

ホルガII型(30mm)の試写

 早速ホルガの新改造品の試写をやった。(仕様は、焦点距離は30mm程度、画角としては105°程度、35mmだと17mmぐらいの感覚。ピンホール口径0.2mmでF値は150ぐらい。)今回もとりあえず写っていた。ただフレアが多く、これが単に逆光が原因なのかわからない。三脚ネジ穴は接着剤でくっつけただけだったが、とりあえず、90°横にしても自重に耐えていた。
 前回画面の右上に光線引きがあったが、これはたぶん、右手でフィルムを巻き上げる時に、左手が裏蓋を押しているために、プラスティックの裏蓋が変形して光が入っていたのではないかと思う。今回は四隅に遮光テープを貼ったので光線引きはなかった。
 また前回は手ブレがあったので、今回はコースターに黒いフエルトを貼って、簡易シャッターにした。まずは、コースターをかぶせた状態で本体のシャッターを開き、コースターを動かすことでシャッターとした。これで手ブレは無くなった。本当は「しゃもじ」がいいのではないかと思う。雨風でゴミがついていたけど、「九尾の狐」はまだ健在だった。

下の写真の撮影中(7分半)にカメラを気にしてくれた参拝者が一組ゆっくりと通ったけど、思った通り写っていなかった。太陽は背中側なので順光なのだけれど、暗い(Ev=7.5)からか、太陽の光の線がはっきりと写っている。露光時間が18分程度に伸びるので、流石にイエローフィルターは外した。フィルターをカメラの中に置く場合は注意が必要だ。

このぐらい焼き込んだほうがいいのかもしれない。

これがコンデジでの写真。三角コーンが目立ってます。

画面いっぱいに撮るにはかなり寄らないと

 ピンホールカメラでは120°近い画角があるので、画面いっぱいに撮るには、かなり寄って取る必要がある。例えば、この前撮った鬼瓦が思ったよりも小さく写っていて驚いてしまった。そこで、どのくらいまで寄ればよいのか考えてみた。

 とりあえず、画面いっぱいと言っても、計算しやすい90°の画角になるぐらいを考えてみた。例えば撮るものの高さを2m、撮る位置を1m高のところとすると、1m離れた所から取ると、上下が45°づつでちょど90°となる。したがって、撮るものの高さの半分までよれば、90°の画角になる。高さ1mの石像は50cmまで寄る。なので、30cmぐらいの小物は15cmぐらいまで寄らないと、画面いっぱいには写らないことになる。

ピンホールカメラの製品(6×6,6×9)比較

 中判用のピンホールカメラの比較表を作ってみた。これから、6×6、6×9ともに、大半のカメラは2Ev落ちてしまう画角120°(35mm換算で12.5mm)を意識して設計しているようだ。これから外れるMIA 6×6 10mmは、画面の回りはほぼ黒くなるはずで、トンネル効果を前提にした画作り用なのか。ただし、120°で2Ev落ちといっても、平均光の場合であり、外側に光源があれば関係ないことになる。また、Zero6x9やONDU6x9は、6×9の設定で103°(35mm換算で17.50mm)となり、そこまで超広角を意識させない画作り用なのかもしれない。ONDUも同じ画角ということは、超広角は6×9では持て余すのかもしれない。6×9も将来撮る可能性があるのであれば、MIA669 27mmが選択肢か。
 伝説のピンホールカメラである穴ガメも6×7判で焦点距離25mm~28mmとしており、やはり画角120°が基準となっていたようだ。一方Monbetsu 45は、焦点距離が45mmであれば6×9判で画角が96°、35mm換算で20mm程度とそこまで超広角を狙った作りではない。
 いずれにしても、中判フィルムを使うピンホールカメラであれば、焦点距離25mm前後のものが標準的なものとなるようだ。MIA社やRSS社のものであれば新品を直接買っても送料込みで2万円そこそこだろう。(円安が痛い) ZeroImageは木製でありそれらより高くなるが、ZERO2000のベーシックであれば、楽天で2万円で販売されている。ONDUも木製で4万円台となる。個人的にはRSSのシフトレンズの付いたRSS 6×6を試してみたい。Holgaでシフトを試すのもありだろうけど。

【2024/05/09】ONDUを追加して内容を改訂。

シフトレンズ(ホール)を持ったピンホールカメラ

 RealitySoSubtle(仏国)のピンホールカメラには、ピンホールを2つ持った6×6ピンホールカメラがある。センターの他に1.5cm上にもう一個ピンホールがある。20.5mmの焦点距離なので、約36°上を向いた点がセンターになる計算だ。このピンホールを使えば、6×6超広角の宿命である無駄に地面を撮ったり、上を向ける必要もない。世間にはいろいろおもしろいピンホールカメラもあるものだ。巻き上げノブが2つ付いていてどちらにも巻き上げられるというのも、間違って1コマ先に送ってしまっても修正できて便利。

ピンホールカメラはいつから映像表現の世界に?

 ピンホールカメラは現代のカメラの初期段階のものであり、WEBではそのような紹介がされている。しかし、半世紀前(今も?)にはピンホールカメラは子どもの遊び道具にしか考えられていなかった。ではいつからピンホールカメラが映像表現の世界に現れたのか?

 例えば小室三喜雄のピンホール俱楽部(閉鎖)には「ピンホール写真は年20前から作品表現の時代に入っています。」とある。なので、ピンホールカメラが映像表現に用いられ始めたのはたぶん1990年代ごろからということになる。これはデジタルカメラの導入の時期とほぼ重なり、一見矛盾している。しかし、デジタルカメラのフィルムサイズ(35mm of APS-c)を考えれば矛盾はない。35mmサイズのカメラのフランジバックでは超広角の画角は得られないからだ。中判や大判フィルムを用いるピンホールカメラでは35mmフィルム換算で15mm程度の超広角表現が普通にできてしまう。

 英国では風景写真家のSteve Goslingがピンホールカメラを使った写真集「Lensless Landscapes」を2008年に出版している。小室三喜雄氏がピンホールカメラの販売を始めたのもこのころだ。ピンホールカメラは映像表現の手段として一部写真家に広がっていったと思われる。

 ではなぜ一般に知られていないのか? これは、カメラが大企業の商業ベースに乗らないからだろう。レンズが不要で原価としては数千円しかかからないし、需要も見込めない。写真工業会から外れたところで、ほそぼそと手作りされているのが現状だ。なので、メディアへの露出が少なく、一般人には知る機会がない。また、2010年頃に広告主の企業が写真家に対してフィルム費用を経費として認めなくなったので、商業写真家も商業写真にピンホールカメラを使うことはない。

 一部の写真家が個人的な写真活動をピンホールカメラで行っているのが現状だろう。しかし、デジタルカメラもスマホにその座を奪われ、行き着くところまで行ってしまった高解像度が嫌われ、「フィルムの再現」とかおかしなことになっている現状では、アナログ再生としてピンホールカメラは広がっていく可能性はある。

伝説のピンホールカメラ(2): 穴ガメ

 「穴ガメ」は写真家の小室三喜雄さんが製作販売されていた、マミヤRB6x7ホルダーをベースにしたピンホールカメラ。このカメラで撮られた写真はストリートスナップ的なものが多いようです。飛行機の離陸の様子を撮った写真もこのカメラによるものだ。

 焦点距離は25/26/27/28mmの4機種で6×7判で画角を計算すると、121°~116°前後、35mm判換算で12.5~14mm程度。ピンホールのサイズは0.2mmのようで、穴の出来上がり次第で焦点距離を調整していたようです。 2023年初めに販売15周年とされているので、2008年頃から販売を始められていたようです。

 なおHPは「2023年3月13日をもって閉じた」と表示されており、販売も同様と思います。

【参照サイト】
小室三喜雄のピンホール俱楽部(閉鎖)
ピンホール写真と旅の記憶
よどじん(平成27年1月)

伝説のピンホールカメラ(1): Mombetsu45/65

 ピンホールカメラのサイトを回っていると、制作販売されていたピンホールカメラがでてくる。そのうちのひとつがMOMBETSU 45/65と言う木製の6×9cm判ピンホールカメラ。北海道紋別の菅原さんという方が制作販売されていたようで、もう販売はしていないそうです。
 このカメラにはファンの方もいて、このカメラで撮った写真展も開かれているようです。

6×9判で画角を計算すると、
Monmbetsu 45が焦点距離45mmで画角96°、35mm判換算で19mm程度。
Monmbetsu 65が焦点距離65mmで画角75°、35mm判換算で28mm程度。
ピンホールカメラとしては望遠側になるようです。
ピンホールのサイズは不明なれど、写真展の記述から0.2mm程度と思われます。

【追記】カメラの写真を見ると本体は45mmで65mmでは20mmのユニットを追加しているような作りです。現状の製品としてはZeroImageのZero 6×9が焦点距離40mmピンホールサイズ0.18mmで同じようなカメラです。あまり広角を意識させない写りです。

【参照サイト】
かわうそと愉快な仲間たち15〜地場の木製ピンホールカメラ
第4話 ピンホールカメラZERO2000
写真展「光画 with Mombetus 45/65」
臼井愛子写真展「ひかりとあそぶ」(Monbetsu45)

ピンホールカメラの広角/標準/望遠レンズ

 ZeroImage4x5を見て思ったのが、ピンホールカメラの広角/標準/望遠レンズはどれにあたるのか。ZeroImage4x5は25mmのフレームを3段重ねて使うが、たぶんこれば、ピンホールカメラでの広角/標準/望遠レンズにあたるのだろう。まず一段の焦点距離25mmの時画角は143°(135の7.5mm)、二段の焦点距離50mmの時の画角は113°(135の15mm)、三段の焦点距離75mmの時画角は91°(135の20mm)。したがって、3段で135の7.5mmから20mmをカバーしていることになる。当然さらに段数を増やすことはできるが、超広角の視的効果は薄れ、ただのピンボケ写真に近くなってしまう。

 従って、4×5での標準レンズは焦点距離50mmで画角113°となる。これはピンホールカメラのイメージサークル120°の範囲内であり、周辺減光もまだひどくない。これを120の6x9に当てはめると焦点距離35mm(画角110°)程度、6×6であれば25mm(画角115°)にあたる。ZeroImageの6×9が40mm、6×6が25mmになっているのも、これを考慮しているのだろう。当然135のフィルム/カメラではこの画角は得られない。

 なので、ピンホールカメラの特徴を生かした作品をつくるのであれば、少なくとも中判(120)フィルムを使い、焦点距離は、6×6であれば25mm前後、6×9であれば35mm前後を選べば良いだろう。なお、レンズの穴の大きさは、Root(焦点距離)x0.036という理論式が得られており、焦点距離がきまれば、穴のサイズも決まってしまう。

 昔はこれを試行錯誤の自作でやっていたようだけど、ここまで机上で検討でき、市販品のなかから最適なものを選ぶことも可能になっている。したがって、ピンホールカメラによる作品作りも、自作ができる人だけのものではなくなっている。

 これに加えて、露光時間も、昔は感や経験にたよってやっていたようだけど、フィルムのデータをもとに最適な露光時間を計算できるようになっている。ピンホールカメラといえどもカメラであり、明るさを露光計で測れば、正確な露光時間を決められる。それに例えば必要露光時間が2秒と計算で出た場合。1秒から4秒は±1EVの範囲なので、大きな失敗写真になる可能性もほとんどない。

ピンホールカメラでスナップ

 ピンホールカメラのWEBを回っていると、ピンホールカメラでスナップを撮っている方々がいる。シャッター付きのピンホールカメラかと思ったが。人の手でやっておられるようだ。例えばEV=14.0の晴れた日に,ISO=800のフィルムを使い、F=138.0のピンホールカメラであれば露光時間が1/ 7秒と出る。この程度のスピードは人の手でもコントロールできるようである。さらにISO1600であれば、1/15秒ぐらいとなり、飛び立つ飛行機も止められるそうだ。使っているピンホールカメラは4×5用の120フィルムホルダーに暗箱を付けたようなピンホールカメラのようだ。
 1/7秒程度の人間シャッターは訓練すればできるようである。ただ使っているのが、カラーネガフィルムのようで、許容範囲も広いので、2倍から1/2倍程度に入ればOKなんだろう。ただ、高速のフィルムが販売中止になったと書かれているので、ISO800以上のフィルムだったのだろう。

ZeroImageのピンホールカメラが届いた

 4×5用のピンホールカメラが届いたが箱の四方に大きなサインがあった。送付の連絡があってから、香港から5日で届いた。このカメラは25mmのフレームをゴム紐で重ねて焦点距離を可変できるようになっている。購入したのは3段セット。焦点距離に応じて、ピンホールの大きさも回転式で替えられる。50mmまでしか使わないだろうからとりあえず2個だけ開封した。
 重量はフレーム2個と4×5のフィルムホルダーを加えて506g。1個ならばホルダー込で330gぐらい。4×5のカメラは軽く2kgオーバーなので、驚異的な軽さだ。木枠しかないので当然といえば当然だけど。
 画角は1枚(25mm)の時143°(135換算約7.5mm)、2枚(50mm)で113°(135換算約15mm)、3枚(75mm)で91°(135換算約20mm)。1枚の時は120°以上は2EV落ちていることになる。

 このまま、4×5の120ロールフィルムホールダ(750g)をつけることも可能だけど、重量があるのでくくり付けて固定するのが厄介だ。また、焦点距離25mmのZero2000がすでにあるので意味もない。

 こちらは別ルートで入手した中判6×9用のピンホールカメラZero 6×9。6×4.5,6×6,6×7,6×9のフォーマットで撮影できる。焦点距離40mmだけど、小さめの0.18mm(F235)のピンホールがついている。0.25mmのレンズも入手したので、具合がわるいようだったら張り替える予定。ユニットになっているのかと想像していたが、単に直径5mm程度の薄銅版だった。6×6専用のZero2000よりはガタイが大きめだ。重量は346g。なおZero2000は276g。

 市販のピンホールカメラは中判でも大判でも最小300gの重量しかなく、小型の三脚を携帯しても、十分散歩カメラとしても機能する感じだ。120のロールフィルムホルダーを使ったピンホールカメラはどうしても1kgを超えてしまい、また、三脚もそれなりにしっかりしたものが必要で、散歩には向かないと思う。下の写真の三脚は、ホルガの試写に用いたもので、50cm程度しか伸ばせないのが難だけど、カメラが軽いのでとりあえず使える。4×5の散歩写真も可能なわけだ。

 ホルガは手軽にピンホールカメラに改造できるのが良いが、難点は光線もれだ。やはりそれ用に設計されたものの方が、心配なく撮影に集中できる。

ホルガを標準ピンホール改造してみた

 とりあえず、レンズ台座を残した改造がうまく行ったので、台座を取り払った標準改造をしてみた。この場合の焦点距離は30mm程度になり、画角としては105°程度、35mmだと17mmぐらいの感覚。レンズを口径0.2mmで作りF値は150ぐらい。フィルターの枠もテープで貼り付けた。計算では画角にはかからないが、ケラれたら考えよう。このままでは、三脚のネジがないが、消しゴムに三脚のネジ変換を押し込めばどうにかなるのではと思う。
 あとは光線漏れ対策。やはりテープでぐるぐる巻にするしかないか?

【追記 2024/05/06】三脚ネジはアマゾンにネジの部分だけ売っていたので、とりあえず接着剤で固定した。外れるようだったらまた考えることに。

Holgaピンホール改造機I型(45mm)試写結果

 改造したHolgaピンホールカメラで試写してみた。とりあえず画像はうまく出ていたが、一番下の写真のように、小さなまるい輪っかのゴミが各画像の上端に出ていて、いまのとこと原因不明。ピンホール回りのゴミであれば、もう少し大きく出てもよさそうだけど。それにホルガ特有の光線漏れが4枚程度あった。いずれもUPした写真はソフト(Silkypix)で修正している。135換算で25mm程度なので、超ワイド感はない。今回はNDフィルターを使う代わりに、全てにY2フィルターを付けている。今回残したホルガのレンズ台座は、ほぼ52mmで、ガラスを外したフィルターの枠がちょうどはまるサイズだった。

 自作ピンホールレンズを付けた改造機のフィルム試写としては初めてだが、うまく行ったと思う。なお、前の着色は濃かったので、薄茶に全て修正した。