フィルムを用いるピンホールカメラは奥が深い

 フィルムを長時間露光する場合には相反則不軌の特性の影響を受けるようだ。簡単に言えば、光の少ないところでは、光の強さに比例してフィルムが感光してくれない。なので、1秒以上の露光時間が必要な場合には、計算で出てくる必要なシャッター速度の数倍の時間の露光時間が必要。

 例えば、Tri-xのような昔に開発されたフィルムのデータシートには、100秒(1.7分)の露光時間が計算で出た場合、実際には1200秒(20分)露光時間が必要。届いたピンホールカメラには50秒以上の場合12倍すると書いてあるが、これはTri-xなど古いフイルムを想定したもののよう。

T-Max400では300秒(5分)、T-Max100で200秒(約3分)とTri-Xの半分以下なっている。感度を考えれば、同じ光の環境ではT-MAX400が一番短いことになる。計算式は、
 必要な時間=(計算で出た露光時間)exp(フィルムの係数) expは10のべき乗
係数はTri-xが1.54、T-MAX100が1.15、T-MAX400が1.24となっている。同様にイルフォードのフィルムのデータシートではD100=1.26、D400=1.41、D3200=1.33、HP4+=1.26、HP5+=1.31、K100=1.26、400=1.30。
 値段と特性から選ぶとケントメアがいいのかも。(ヨドバシ通販で840円)アクロスは120秒までは補正の必要なしとしているが、6×6のフィルムは今はない。アクロスIIも同じ処方のようだ。カラーネガフィルムの場合、例えばPortra400ではデータは無く自分で試験しろと書いてあるが、他の白黒ネガを同じく、とりあえず1.3ぐらいと考えて撮ってみるのが正解だろう。

 いすれにせよ、特性のわからないフィルムでは、まずデータシートを見て計算し、データシートがないものは、係数1.3ぐらいで撮ってみて調整するしかない。double-Xは映画用フィルムなので、長時間露光は想定されていない、しかし、その歴史から、特性はTri-X(1.54)と同様だろう。

 昼間の数秒の撮影ではだいたいその1.5倍から2倍の値。夜Ev=6(ISO100)の環境で絞りがF=138の場合、計算からは約5分の露光時間が出るが、相反則不軌の特性を考えると、特性が1.3のフィルムでは約30分の露光時間が必要となる。そういう意味では、長時間露光する場合にもデジタルカメラの方が相反則不軌の特性の影響を受けずに有利ということにはなる。天体写真に使うカメラのデジタル化が早々に進んだのはこのためのようだ。

【追記 2024/03/27】昼間の試写用にケントメア100 120を注文してみた。

コンデジを露出計として使う

 単体露出計を使う場合、部分測光になるため、撮ろうとする方向でも露出計を向けた向きで値が違い、画面全体ではデコボコする。なので全面平均測光の露出を知ろうとすると、コンデジの全面測光(GRではブロック測光)をつかうのが良いのでは無いかと思う。それに、スポット測光や中央重点測光の機能もついている。

 また、単体露出計のL-308Bの受光角は40°。それに対し、焦点距離50mmのレンズの画角は47°でほぼ合っているが、28mmの画角は75°なので、中央の1/4の部分を測光しているにすぎない。

 しかし、デジタルカメラの絞りや速度は可変でなので換算しにくいと思っていた。そこで、これまで撮った写真の記録をグラフにしてみるた。下のグラフのようにEV値を横軸にすると、絞りは3点(F2.4, F3.5, F7.1)しかないことが分かった。したがって、EV値を0.5単位ぐらいで取ると、20位の絞りと速度の組み合わせで夜から昼のEV換算表ができることになる。もしくは、昼用と夜用で0.25単位でつくれば良いかも。特に暗い夜には有効な気がする。じっくり撮る時に使えそう。本当はコンデジ自体でEv値を表示してくれれば良いのだが。デジタルカメラでは余り意味のない、従来の、絞りと速度だけしか表示されない。
 ピンホールカメラのようにF値が固定だと、そのEv表の一つの欄に、必要な露光時間を書くことができる。したがって、コンデジに表示される絞りと速度から、すぐに必要な露出時間が分かる。

 他のコンデジでも同様の仕組みだろうから応用できる。

できた換算表はこんな感じ。

【追記 2024/03/27】1秒以上の露光が必要な時、フィルムでは相反則不軌の特性の影響が出るのでその補正が必要。そのため実際には計算から出た露光時間の数倍の露光時間が必要。ここを参照

Vision3 500T タングステンフィルムのISO設定値

 Vision3 500Tを使う場合にちょっと悩むのが、カメラや露出計に設定するISOの値です。フィルムの説明書には感度は以下となっています。
【感度(露光指数 E.I.)】
タングステン:500
デーライト :320(コダック ラッテン2 ゼラチンフィルター No. 85 使用時)

 これから、フィルター無しで撮影する場合には、カメラや露出計をISO500(400+1/3)に設定すれば良いことになります。では85Bフィルターを使用する場合にはいくらのISO値を設定すればよいのか?
 これは、カメラや露出計の側光部分に入る光がフィルターを通っているかどうかで変わります。例えば一眼レフやミラーレスやM6などでは、フィルタをつけたレンズを通ったあとの光で測光しているので、ISO値には500を設定します。単独の露出計や測光部がレンズとは別に測光窓ついているレンジファインダー機ではISO320(200+2/3)に設定します。測光部が別であっても、フィルターがその部分(測光の窓)をカバーしているのであれば、ISO500に設定します。

 Vision3 500Tに85Bフィルターをつけた場合には、250Dとの感度の差はほぼ無い(+1/3)ことになります。

 なおTiffenの85Bフィルターの減光の仕様は0.6(2/3)段の低下ですが、ケンコーのW12もしくはW10は1段の低下としているので、ISOを250(200+1/3)にする必要があるようです。W10の方がW12より色が薄いので、もし入手したら、露出計で減光具合を調べてみる必要があります。