スマホ露出計の補正

 スマホに露出計のアプリをダウンロードして使うことがあると思いますが、スマホの露出計が正しい値を示しているかはわかりません。なぜなら、そのアプリを作成した人は別のスマホのハードを使用して校正しているからです。なので、単体の露出計と比較して校正してみる必要があります。

 私のHDファイヤーにロードした「Light Meter」では露出計とくらべ、1.5Evも低い値がでていました。では、露出計が無い場合は何を使って校正すれば良いか? デジカメと露出計を比べた場合ほとんど差はありませんでした。なので、デジカメと比べればよいのですが、デジカメの場合Ev値を表示をしてくれているものはほとんど無いと思います。そのため、絞り(F)、シャッタースピード、ISO値からEv値を計算するソフトを作ってみました。これで計算したEv値とスマホのメータのEv値に差がある場合には補正する必要があります。補正機能はアプリに標準として付いていると思います。

 小型の露出計では精度が出ていないものもあるので、このような方法で比較してみることも必要です。

EV値の計算

引き伸ばし機の露光時間

 フィルムプリントの一番アナログ的なところが、数秒ずつ違えて段階露光をして、露光時間を決めるところ。普通に考えれば、印画紙の感度が決まれば、引き伸ばし機から出る光の照度で、おおまかな露出時間はきまるはずだ。なので、より狭い範囲で段階露光ができる。しかし、これを説明したものは見たことがない。実際、照度計とタイマーを連動したも装置もあるのだから、照度計があれば、計算できるはずだ。セコニックのL-308Bには簡易的な照度計機能がつているので、これを使えばなんとかなるはずと思う。

 例えばキャビネで焼いたものを、8×10に焼き直す場合には、照度の違いぶん、露光時間を長くすればよいはずだ。ただ長時間露光なので、正比例していないことも考えられるが。これを機にちょっと実験してみよう。

Zero2000(F138)ピンホールカメラの露出時間

 Zero2000ピンホールカメラをケントメア(ISO200/400)で撮る場合の露出時間をまとめた。
 ケントメア100の場合、晴れの日(Ev=14)は約1秒、曇りの日(Ev=12)は約7秒、夜明るい室内(Ev=6)は約22分、夜景(Ev=4)は約2時間。
 ケントメア400では、晴れや曇りでは1秒を割ってしまうので、どうしても撮る場合にはNDフィルタが必要。晴れの日はND4フィルタを付けて約1秒、曇りの日(Ev=12)で約1秒、夜明るい室内(Ev=6)は約5分、夜景(Ev=4)は約30分。(EV値はISO100換算)なお、1秒前後のスピードの時は、NDフィルターで調整したほうが正確な露光値になる。

 まとめると、Zero2000(F138)ピンホールカメラを使う場合、晴れの日の屋外であれば、(白黒でもカラーでも、) ISO100のフィルムを使えばシャッターを1秒程度開けば大体写るということのようです。夜の室内はiSO400のフイルムで5分程度。夜景はISO400のフィルムで30分程度。

Ev値の計算式(II)

 Evの計算式は2を低数とする対数で計算していますが、普通の電卓には2を低とする対数のキーはありません。ここでは、具体的にシャッタースピードと絞りからEv値を計算する方法を説明します。

 まず対数の計算式として、普通の電卓にも付いている10を低数とする対数で計算すると以下の式となります。
log2(x)=log10(x)/log10(2)

 これを使って、例えばISO100のフィルムを使って晴れた日(Ev=14)に1/125sとF11で写真を撮った場合のEv値の計算は以下となります。
 Ev(晴れた日) = log10(125)/log10(2)+log10(11)/log10(2 )x2
        = 6.97+6.93=13.9

 絞りの方を2倍しているのは、F値は半径に比例していますが、明るさは面積に比例するからです。この計算により、(1/ISO値)のシャッタースピードとF11が、晴れた日の設定で良いことが分かります。
また、ISO400の場合には、log2(400/100)=log2(4)=2だけEV値が高くなります。

コンデジを露出計として使う

 単体露出計を使う場合、部分測光になるため、撮ろうとする方向でも露出計を向けた向きで値が違い、画面全体ではデコボコする。なので全面平均測光の露出を知ろうとすると、コンデジの全面測光(GRではブロック測光)をつかうのが良いのでは無いかと思う。それに、スポット測光や中央重点測光の機能もついている。

 また、単体露出計のL-308Bの受光角は40°。それに対し、焦点距離50mmのレンズの画角は47°でほぼ合っているが、28mmの画角は75°なので、中央の1/4の部分を測光しているにすぎない。

 しかし、デジタルカメラの絞りや速度は可変でなので換算しにくいと思っていた。そこで、これまで撮った写真の記録をグラフにしてみるた。下のグラフのようにEV値を横軸にすると、絞りは3点(F2.4, F3.5, F7.1)しかないことが分かった。したがって、EV値を0.5単位ぐらいで取ると、20位の絞りと速度の組み合わせで夜から昼のEV換算表ができることになる。もしくは、昼用と夜用で0.25単位でつくれば良いかも。特に暗い夜には有効な気がする。じっくり撮る時に使えそう。本当はコンデジ自体でEv値を表示してくれれば良いのだが。デジタルカメラでは余り意味のない、従来の、絞りと速度だけしか表示されない。
 ピンホールカメラのようにF値が固定だと、そのEv表の一つの欄に、必要な露光時間を書くことができる。したがって、コンデジに表示される絞りと速度から、すぐに必要な露出時間が分かる。

 他のコンデジでも同様の仕組みだろうから応用できる。

できた換算表はこんな感じ。

【追記 2024/03/27】1秒以上の露光が必要な時、フィルムでは相反則不軌の特性の影響が出るのでその補正が必要。そのため実際には計算から出た露光時間の数倍の露光時間が必要。ここを参照

ゴッセンの露出計

 小型のゴッセンの露出計を入手。5cmぐらいしか無いので、携帯するのには便利。で、散歩の途中でEv値を測ってみたがISO100の設定でEv15~16と出た。高めなので、セコニックやコシナの露出計やコンデジの露出と比べると1段高めに出る個体だった。なので即修理調整に出した。ヤフオクの品は完璧なものは少ない。

【追記】結局ゴッセンの露出計は日本では調整できなかった。ヤフオクで仕入れたゴッセンのデジシックス2の調整は、ユーザでもできる±3Ev程度を1/3Ev単位で固定で補正する方法で修正することになった。しかし、時間が経つともとに戻るようだ。セコニックのL-308Bと比べると、反射光式の計測値が+1Ev高い。したがって、反射光式で-1Ev補正すると、今度は入射光式が1Ev低くでる。もともと、入射光式で出荷検査してあるようだ。有名メーカのなので信じられなかったが、ゴッセンの小型露出計はこんなものみたい。
 結局、露出計を買うなら、日本で検査してあり、故障に対応できるものにしたほうが良い。現行品ならセコニックのL-308X、中古ならL-308Bがおすすめ。(2024/04/01)

スナップ(露出計無し)の絞り値のまとめ

 スナップの時の絞り値の話をまとめるとこんな感じになる。

 まず「晴れた日のF16ルール」と呼ばれるものがあり、ISO100の場合晴れた日はF16で1/100。これはEv値にするとEv15となり、「快晴」の場合だ。快晴の日にこれで撮れば適正となるが、普通の晴れの日や空の少ない写真ではアンダー目の写りとなる。

 ブロッソンは晴れた日は1段下のEv値のEv14(F8・1/250s)としている。なので、晴れの日には一段下のF11ルール(F11・1/125s)が目安としては良いと思う。これを基準に、曇若しくは日影では、2段落としたEv12(F5.6・1/125s)。ISO100ではスピードは落とせないので絞るしかない。

 レンズの特性が良いとされるF8にこだわれば、F8に一段絞り スピードを1段上げて、晴れの日には、ISO100ではF8・1/250s、ISO200のフィルムでF8・1/500s。同様にISO400のフィルムは、F8・1/1000s。「晴れたらセンパチ」というのがこの設定だ。なのでF16ルールとは1段違う。F16は「快晴」の設定で、「晴れの日全般」に使える設定ではない。

 いずれにしても、『晴れた日は絞りF11でスピードは1/ISO秒。日陰や曇りは2段落とし。』と記憶しておけば、あまり外れはないことになる。露出計を使う場合は、現在の絞りと速度の設定値のEv値から0.5だけ変化したら、一段開けたり、絞ったりすればよい。

 普通のカメラでは、絞りやスピードは1段づつしか変えられないので、露出計を使ったとしても最大±0.5段の誤差がある。これが±1段に悪化するわけだが、フィルムの許容範囲に入るだろう。ただし、フィルム全体をみれば、コマごとに+1段から‐1段までの濃淡のあるネガになると思う。

【追記 2024/03/04】露出を説明する時、絞りとシャッタースピードのみで説明される場合が多い。しかし、その説明では何も残らない。上の表のようにEv値と関連させた説明でないと、頭に入ってこない。たぶんEv値は初心者には難しいとして省くのだろうが、実際にはEv値が分からない限り、適正露出が分かることは無い。一番良いのは、Ev値が表示できる露出計を持って、町をぶらついてみることだ。普通の晴れた日では、順光であればEv値は14~15(ISO100の設定で)ぐらいであることが体得できる。なので、Ev14の設定(F11,1/125sもしくはF8,1/250s)でよいことになる。アンダー目より、若干オーバ目の方が良い。ぼかしを楽しむ場合は、F4,1/1000sで良い。(昔のライカだとISO100のフィルムが必須。) また曇の日は、伊達に2段絞りを開けるわけではなく、Ev値が2Ev下がるから、2段開けているだけだ。

カルティエ ブレッソンの露出設定値

 ブロッソンの使用機材を調べていたら、「晴れていたら、速度1/125s 絞りF8(Ev値13)、距離10feet(3m)」の固定で使っていたというのも出てきた。先の「曇りがF5.6で1/125sec(Ev値=12)、晴れがF8で1/250sec(Ev値=14)」の真中の数字だ。この設定を固定して使っていたとなると、ネガのラチチュードを±2段と期待して使っていたことになる。したがって、この2つの記事の話は時期が違うのだろう。1設定の固定は「写るんです」の方式だ。

 結局手ブレを防ぐためにスピードを最低限の1/125sとし、絞りはF8が中心だったようだ。2段階でカバーする時には、暗いときには1段開け(F5.6)、明るいときには速度を1段上げ(1/250s)て考えていた。(使用フィルムはPlus-X(ISO80)と仮定して。)F8以上に絞る必要性は感じていなかったようだ。

 また、50mmレンズF8絞りで、ピント位置3mでピントが合うのは2.2mから4.4mまでしかない。ピント位置が5mで3.2mから10.7mまでカバーする。 Webの記事では10feet(約5m)としているものが多い。5mの場合はF5.6でも(3.6m~8m)と近くはほぼ変わらない。たぶん、10feet(=3m)は35mmのレンズの場合(ピント位置3mで、F8で1.8mから8.6m)のことだろう。

 使っていた機材としてはライカIIIfでは、カールツアイスのゾナー 50mm F1.5をライカLマウント用に改造したもの。M3ではSummicron 50mm F2(沈胴)がメインだったようだ。

【追記】初期のゾナーはそもそもF8までしか無かったようだ。[Carl Zeiss Sonnar 5cm f1.5 (nickel black f8)]
 ズマリット(50mm F1.5)という情報もありますね、やはりF1.5がメインだったのか。

カルティエ ブレッソンの速写術

 カルティエ ブレッソンは、「曇りがF5.6で1/125sec、晴れがF8で1/250sec」で撮っていたと語っています。これをEv表でみると、曇りがEv=12、晴れがEv=14となります。当時のフィルムのラチチュードを±1と仮定すると、EV=15からEV=11までを、この2つの組み合わせだけでカバーしていることになります。(ここでF5.6の1/500sではなく、F8の1/250sを使っているのは、1/300sまでしかないカメラも使っていたからかもしれません。) したがって、組み合わせの切り替えを誤らなければ、適正露出との差も1段程度に抑えられていた。

 彼が使用したフィルムは明確になってませんが、コダック社のフィルムの歴史からは、1938年にPlus-x(ASA80)とSuper-XX(ASA160)発売され、1958年にTri-X(ASA250)が発売され、Double-Xから代わっています。ここで、各フィルムに対する右のEv表を見ると、Ev11~15で対応しているフィルムはPlus-Xということがわかります。これから、この2組の組み合わせに対応するフィルムはPlus-Xということになります。また、2つの組み合わせの境界は、この表からは、太陽の光で影ができているかどうかという点のようだ。

 現在彼と同じ2つの組み合わせでスナップを撮ろうとすれば、ISO100のフィルムでよいことになり、ISO400であれば2段スピードを上げて、F5.6,1/500sとF8,1/1000sでよいことになります。ISO400のネガはラチチュードが±2ぐらいなので、なお万全です。いずれにせよ、この方法であれば、露出計無しにスナップすることが可能となります。たぶん「曇り」は「日陰」も含めてと思います。

 F16は写真教室などで求められる基本のパンフォーカスの写真となりますが、F4~F5.6辺りで撮るとピントがあった被写体が主題として浮かび上がります。

ps.現在ではTri-XはISO400でISO100と比べ4倍なのに3倍と名付けられているのに疑問がありましたが、発売当時はISO80が基本だったようです。

【追記】ライカのシャッタースピードはバルナックまでは1/100s,1/200s,1/500sのスタイルで、M3(1954年)から、1/60s, 1/125s, 1/250s, 1/500sのスピードに変わっている。なので上記撮影スタイルはM3からの話。その前までは、「ASA80のフィルムで、曇りがF5.6で1/100sec(Ev=12.0)、晴れがF8で1/200sec(Ev=14.0)」だったのかもしれない。この場合もEv=11からEv=15までをカバー。

見やすいEv表

 これまで作ってみた普通のEv表は見にくいので、Ev値と絞り値を軸にして表を作ってみた。この表だと、同じEv値であれば同じ列の上下を見るだけでいい。
 例えばISO100のフィルムの場合、F16のルールだと、F16と1/125sの組み合わせが基本であり、F8と1/1000sの組み合わせから、F22と1/60sぐらいの組み合わせが選べることになる。(F32は普通ついていないので。) 曇の日は、3段落としたF5.6辺りで1/ISO秒の組み合わせが基本となりそう。その場合ISO100で、F5.6と1/125sの組み合わせでEV値が12程度。
 ISO400のフィルムでは、1/500sのところを斜めに動く。Double-Xも同様に1/250sのところとなる。結局、シャッタースピードが1/ISO秒で固定であれば、絞りを一段ずつ開けていくことになる。F16固定であれば、左側にスピードを一段ずつ遅くさせることになる。

 また、ぼかしが効くF4辺りの絞りを使えるのは、1/1000sまでしか無いカメラではEv14までとなる。したがって、晴れた日はISO400のフィルムではF4は選べないことになる。(NDフィルターを使う必要がある)

 露出計にEv値のメモリがなくても、例えばF16固定でスピードを変化させ、最適値が1/125sであれば、その時点のEv値は15となる。

雨の日のEv値

雨の止んでる合間にちょっと散歩。データを見るとISO100,F3.4,1/440sから、
Ev=log(440,2)+log(3.4,2)x2-log(100/100,2)=8.78+3.53-0=12.31。
なので、典型的な「曇の日」ということに。

そして、昨日の写真のデータは、ISO100,F6.7,1/570sから、
Ev=log(570,2)+log(6.7,2)x2-log(100/100,2)=9.15+5.49-0=14.64。
なので、典型的な「晴れの日」ということに。

Ev計算式(2)

 Evの計算式に大陸系のスピード(1/300,1/100,1/50,1/25)を加えてみた。いずれも、近いスピードと±0.3、1/3段ほどの違いがあるが、ネガなら許容範囲が±2ぐらいなのであまり変わらないだろう。
 なお「サニーF16ルール」というのがあるそうで、晴天で日の当たっている場所では、「絞りF16、シャッタースピード1/ISO秒」で適正露出が得られるというもの。Ev値の計算では、ISO100の場合Ev14.6、ISO400でEv16.6というこになり、右の表の快晴に近い値になっている。カメラの設定としては、ISO100で1/125s、ISO400のフィルムで1/500s。日の当たっていない日陰ではこれより2~3段開くことになる。
 なおエクセルの計算式は2を低とする対数。
参考となるWEB