「穴ガメ」は写真家の小室三喜雄さんが製作販売されていた、マミヤRB6x7ホルダーをベースにしたピンホールカメラ。このカメラで撮られた写真はストリートスナップ的なものが多いようです。飛行機の離陸の様子を撮った写真もこのカメラによるものだ。
焦点距離は25/26/27/28mmの4機種で6×7判で画角を計算すると、121°~116°前後、35mm判換算で12.5~14mm程度。ピンホールのサイズは0.2mmのようで、穴の出来上がり次第で焦点距離を調整していたようです。 2023年初めに販売15周年とされているので、2008年頃から販売を始められていたようです。
なおHPは「2023年3月13日をもって閉じた」と表示されており、販売も同様と思います。
【参照サイト】
小室三喜雄のピンホール俱楽部(閉鎖)
ピンホール写真と旅の記憶
よどじん(平成27年1月)
伝説のピンホールカメラ(1): Mombetsu45/65
ピンホールカメラのサイトを回っていると、制作販売されていたピンホールカメラがでてくる。そのうちのひとつがMOMBETSU 45/65と言う木製の6×9cm判ピンホールカメラ。北海道紋別の菅原さんという方が制作販売されていたようで、もう販売はしていないそうです。
このカメラにはファンの方もいて、このカメラで撮った写真展も開かれているようです。
6×9判で画角を計算すると、
Monmbetsu 45が焦点距離45mmで画角96°、35mm判換算で19mm程度。
Monmbetsu 65が焦点距離65mmで画角75°、35mm判換算で28mm程度。
ピンホールカメラとしては望遠側になるようです。
ピンホールのサイズは不明なれど、写真展の記述から0.2mm程度と思われます。
【追記】カメラの写真を見ると本体は45mmで65mmでは20mmのユニットを追加しているような作りです。現状の製品としてはZeroImageのZero 6×9が焦点距離40mmピンホールサイズ0.18mmで同じようなカメラです。あまり広角を意識させない写りです。
【参照サイト】
かわうそと愉快な仲間たち15〜地場の木製ピンホールカメラ
第4話 ピンホールカメラZERO2000
写真展「光画 with Mombetus 45/65」
臼井愛子写真展「ひかりとあそぶ」(Monbetsu45)
ピンホールカメラの広角/標準/望遠レンズ
ZeroImage4x5を見て思ったのが、ピンホールカメラの広角/標準/望遠レンズはどれにあたるのか。ZeroImage4x5は25mmのフレームを3段重ねて使うが、たぶんこれば、ピンホールカメラでの広角/標準/望遠レンズにあたるのだろう。まず一段の焦点距離25mmの時画角は143°(135の7.5mm)、二段の焦点距離50mmの時の画角は113°(135の15mm)、三段の焦点距離75mmの時画角は91°(135の20mm)。したがって、3段で135の7.5mmから20mmをカバーしていることになる。当然さらに段数を増やすことはできるが、超広角の視的効果は薄れ、ただのピンボケ写真に近くなってしまう。
従って、4×5での標準レンズは焦点距離50mmで画角113°となる。これはピンホールカメラのイメージサークル120°の範囲内であり、周辺減光もまだひどくない。これを120の6x9に当てはめると焦点距離35mm(画角110°)程度、6×6であれば25mm(画角115°)にあたる。ZeroImageの6×9が40mm、6×6が25mmになっているのも、これを考慮しているのだろう。当然135のフィルム/カメラではこの画角は得られない。
なので、ピンホールカメラの特徴を生かした作品をつくるのであれば、少なくとも中判(120)フィルムを使い、焦点距離は、6×6であれば25mm前後、6×9であれば35mm前後を選べば良いだろう。なお、レンズの穴の大きさは、Root(焦点距離)x0.036という理論式が得られており、焦点距離がきまれば、穴のサイズも決まってしまう。
昔はこれを試行錯誤の自作でやっていたようだけど、ここまで机上で検討でき、市販品のなかから最適なものを選ぶことも可能になっている。したがって、ピンホールカメラによる作品作りも、自作ができる人だけのものではなくなっている。
これに加えて、露光時間も、昔は感や経験にたよってやっていたようだけど、フィルムのデータをもとに最適な露光時間を計算できるようになっている。ピンホールカメラといえどもカメラであり、明るさを露光計で測れば、正確な露光時間を決められる。それに例えば必要露光時間が2秒と計算で出た場合。1秒から4秒は±1EVの範囲なので、大きな失敗写真になる可能性もほとんどない。
ピンホールカメラでスナップ
ピンホールカメラのWEBを回っていると、ピンホールカメラでスナップを撮っている方々がいる。シャッター付きのピンホールカメラかと思ったが。人の手でやっておられるようだ。例えばEV=14.0の晴れた日に,ISO=800のフィルムを使い、F=138.0のピンホールカメラであれば露光時間が1/ 7秒と出る。この程度のスピードは人の手でもコントロールできるようである。さらにISO1600であれば、1/15秒ぐらいとなり、飛び立つ飛行機も止められるそうだ。使っているピンホールカメラは4×5用の120フィルムホルダーに暗箱を付けたようなピンホールカメラのようだ。
1/7秒程度の人間シャッターは訓練すればできるようである。ただ使っているのが、カラーネガフィルムのようで、許容範囲も広いので、2倍から1/2倍程度に入ればOKなんだろう。ただ、高速のフィルムが販売中止になったと書かれているので、ISO800以上のフィルムだったのだろう。
ZeroImageのピンホールカメラが届いた
4×5用のピンホールカメラが届いたが箱の四方に大きなサインがあった。送付の連絡があってから、香港から5日で届いた。このカメラは25mmのフレームをゴム紐で重ねて焦点距離を可変できるようになっている。購入したのは3段セット。焦点距離に応じて、ピンホールの大きさも回転式で替えられる。50mmまでしか使わないだろうからとりあえず2個だけ開封した。
重量はフレーム2個と4×5のフィルムホルダーを加えて506g。1個ならばホルダー込で330gぐらい。4×5のカメラは軽く2kgオーバーなので、驚異的な軽さだ。木枠しかないので当然といえば当然だけど。
画角は1枚(25mm)の時143°(135換算約7.5mm)、2枚(50mm)で113°(135換算約15mm)、3枚(75mm)で91°(135換算約20mm)。1枚の時は120°以上は2EV落ちていることになる。
このまま、4×5の120ロールフィルムホールダ(750g)をつけることも可能だけど、重量があるのでくくり付けて固定するのが厄介だ。また、焦点距離25mmのZero2000がすでにあるので意味もない。



こちらは別ルートで入手した中判6×9用のピンホールカメラZero 6×9。6×4.5,6×6,6×7,6×9のフォーマットで撮影できる。焦点距離40mmだけど、小さめの0.18mm(F235)のピンホールがついている。0.25mmのレンズも入手したので、具合がわるいようだったら張り替える予定。ユニットになっているのかと想像していたが、単に直径5mm程度の薄銅版だった。6×6専用のZero2000よりはガタイが大きめだ。重量は346g。なおZero2000は276g。

市販のピンホールカメラは中判でも大判でも最小300gの重量しかなく、小型の三脚を携帯しても、十分散歩カメラとしても機能する感じだ。120のロールフィルムホルダーを使ったピンホールカメラはどうしても1kgを超えてしまい、また、三脚もそれなりにしっかりしたものが必要で、散歩には向かないと思う。下の写真の三脚は、ホルガの試写に用いたもので、50cm程度しか伸ばせないのが難だけど、カメラが軽いのでとりあえず使える。4×5の散歩写真も可能なわけだ。
ホルガは手軽にピンホールカメラに改造できるのが良いが、難点は光線もれだ。やはりそれ用に設計されたものの方が、心配なく撮影に集中できる。

ホルガを標準ピンホール改造してみた

とりあえず、レンズ台座を残した改造がうまく行ったので、台座を取り払った標準改造をしてみた。この場合の焦点距離は30mm程度になり、画角としては105°程度、35mmだと17mmぐらいの感覚。レンズを口径0.2mmで作りF値は150ぐらい。フィルターの枠もテープで貼り付けた。計算では画角にはかからないが、ケラれたら考えよう。このままでは、三脚のネジがないが、消しゴムに三脚のネジ変換を押し込めばどうにかなるのではと思う。
あとは光線漏れ対策。やはりテープでぐるぐる巻にするしかないか?
【追記 2024/05/06】三脚ネジはアマゾンにネジの部分だけ売っていたので、とりあえず接着剤で固定した。外れるようだったらまた考えることに。

Holgaピンホール改造機I型(45mm)試写結果
改造したHolgaピンホールカメラで試写してみた。とりあえず画像はうまく出ていたが、一番下の写真のように、小さなまるい輪っかのゴミが各画像の上端に出ていて、いまのとこと原因不明。ピンホール回りのゴミであれば、もう少し大きく出てもよさそうだけど。それにホルガ特有の光線漏れが4枚程度あった。いずれもUPした写真はソフト(Silkypix)で修正している。135換算で25mm程度なので、超ワイド感はない。今回はNDフィルターを使う代わりに、全てにY2フィルターを付けている。今回残したホルガのレンズ台座は、ほぼ52mmで、ガラスを外したフィルターの枠がちょうどはまるサイズだった。
自作ピンホールレンズを付けた改造機のフィルム試写としては初めてだが、うまく行ったと思う。なお、前の着色は濃かったので、薄茶に全て修正した。


ピンホールカメラとイメージサークル
一般のカメラのレンズでのイメージゾーンは、メーカが定める所の、光量落ちのない範囲ということになる。しかし、ピンホールカメラの場合、光量落ちを補正するレンズが無いので、センターから外れるにしたがって、距離の2乗で光量は落ちていくことになる。ピンホールカメラのメーカのカタログには、イメージゾーンのスペックは書かれていない。しかし、アマゾンのzone2000の販売ページなどに、イメージサークル87.5mmという表記がある。焦点距離25mmとイメージサークルの半径87.5/2=43.75mmから逆算すると、ピンホールからイメージサークルまでの距離は2乗の和のルートをとると、ちょうど50mmとなる。したがって、焦点距離の倍の所、すなわち、光量が2段落ち(1/4)の所を仮に、イメージサークルと仮定しているようだ。これはフィルムの特性にもよるものなので、仕様としては設定していないようだ。いずれにしても、このあたりから光量は急激に減ることになる。(フィルムの感度が±2EVの場合、センターを中心に測光すると、イメージサークル外ではフィルムの感度外(-2EV以下)となるので。)
この計算から逆に、ピンホールカメラで撮影できる画角(イメージサークル)を計算すると、acos(25/50)x2=60°x2=120°となる。例えば、MIA6x6 10mmの画角は152°と計算上は出るが、画面全面が一様な光度だと、120°程度以上は2段光が落ちるので黒いサークルになる。これは実際には次のYouTubeのMIA6x6の20mmと10mmの比較で確認できる。20mmも126°なのでわずかにイメージサークルにかかっている。
Testing the Mia 6×6 10mm PINHOLE CAMERA
このような、”トンネル効果”が欲しければ、画角が120°以上のピンホールカメラなら期待できる。たとえば、以下の動画にある4×5の25mmなども。いずれにせよ、ピンホールカメラの場合はイメージサークル内が同じ光量ではなく、センターから下がり続けている。なので、イメージサクル内であってもトンネルにはなる。
ピンホールカメラの焦点距離と画角
焦点距離と画角をフィルムサイズごとに整理してみた。フィルムサイズの下の欄は対角線距離(mm)。ついでに左側に、焦点距離に応じた最適針穴サイズと、その時のF値を併記した。また、35mmの標準的なレンズとピンホールカメラの代表的な値を太字にした。
この表をみると、ピンホールカメラの画角は90°以上、35mm換算で焦点距離20mm以下の超広角の写野を狙っていることがわかる。ピンホールカメラの非日常感はこの超広角画面から受ける印象が大きいのだろう。(狭い画角ではただのピンボケ写真にしか見えなかったりするので。)また、解像度はフィルムサイズが大きくて、焦点距離が長いほど良くなる。なので、フィルムサイズが大きいほど受ける印象も大きくなるのだろう。
昨日作ったHolga改造ピンホールカメラは焦点距離が45mmなので、画角が83°。35mmに換算して25mmとなるので、ピンホールカメラとしては若干物足りない画角となる。Holgaを普通改造する時には、レンズ台座を外した、焦点距離30mm程度にするので、これであれば画角はなお解像度は106°と超広角の範囲に入る。
35mmフィルムのレンジファインダー機のフランジバックは28mm(Leica M/L)前後なので、画角は75°程度となる。したがって、画角的には物足りない絵となる。いまではミラーレスのデジタルカメラを使ったピンホールカメラも見かけるが、フランジバックが18mm前後のようだ。しかし、APS-Cサイズのものだろうから同じと言える。もしフルサイズであれば、超広角の範囲に入る。なので一般的には、中判や大判フィルムを使ったピンホール写真の方が、超広角を利用した撮影が可能だ。
以下の比較記事を見ればその差ははっきりしています。フィルムの方はそれだけで作品になってますが、デジタルはボケた写真にしか見えません。
フィルム(MIA 6×6 20 mm)とデジタルのピンホールカメラの比較
印象的なピンホール写真は超広角と長時間露光から生まれてくるのだろう。

画角が50°程度が各フィルムサイズの標準レンズ。