Ev値の計算式(II)

 Evの計算式は2を低数とする対数で計算していますが、普通の電卓には2を低とする対数のキーはありません。ここでは、具体的にシャッタースピードと絞りからEv値を計算する方法を説明します。

 まず対数の計算式として、普通の電卓にも付いている10を低数とする対数で計算すると以下の式となります。
log2(x)=log10(x)/log10(2)

 これを使って、例えばISO100のフィルムを使って晴れた日(Ev=14)に1/125sとF11で写真を撮った場合のEv値の計算は以下となります。
 Ev(晴れた日) = log10(125)/log10(2)+log10(11)/log10(2 )x2
        = 6.97+6.93=13.9

 絞りの方を2倍しているのは、F値は半径に比例していますが、明るさは面積に比例するからです。この計算により、(1/ISO値)のシャッタースピードとF11が、晴れた日の設定で良いことが分かります。
また、ISO400の場合には、log2(400/100)=log2(4)=2だけEV値が高くなります。

ピンホールフイルムカメラでビルの夜景を撮るには

 工場夜景のような、ビルの夜景のEv値はISO100でEV=4ぐらいのようです。したがって、F138のカメラでは計算上は20分(1190秒)となるけど、相反則不軌の特性を考慮すると数時間となる。したがって、ISO100のフィルムの選択肢はなく、最低ISO400のフィルムを使って時間は1/4となり、計算上の露光時間は5分、相反則不軌を考慮して30分程度となる。

 なので、このぐらいまで暗くなると、Delta3200などのフィルムを使うのも考慮する必要がある。この場合、露光時間はISO400の1/8となるので、計算上の露光時間は40秒、相反則不軌を考慮しても2分程度に収まることになる。

 またEv=6の夜の室内では、Tri-X系統ではないISO400のフィルムを使うのが実際的だろう。ただし、昼間の撮影では1秒を切ってしまうので、ISO400フィルムを用いる場合には、NDフィルターで光量を落とす必要がある。

ピンホールカメラ(Zero 2000)が届いた

 ピンホールカメラが届いた。よく見るスタンダードタイプにレリーズのアダプターとフィルターのアダプターがついたもの。NDフィルターで露光時間が延ばせる。使うフィルムは120の6×6用。35mmフィルムで使うことも考えたけど、とりあえず1000円以内で買えるフィルムもあるようなので、まだ遊べる感じ。
 正式な仕様は、ピンホールが0.2mm、焦点距離25mm、F値138となっている。大きさは13cm x 8cm x 4.5cmで、普通のカメラと同じような大きさ。
 試し撮りしてみないと。

フィルムを用いるピンホールカメラは奥が深い

 フィルムを長時間露光する場合には相反則不軌の特性の影響を受けるようだ。簡単に言えば、光の少ないところでは、光の強さに比例してフィルムが感光してくれない。なので、1秒以上の露光時間が必要な場合には、計算で出てくる必要なシャッター速度の数倍の時間の露光時間が必要。

 例えば、Tri-xのような昔に開発されたフィルムのデータシートには、100秒(1.7分)の露光時間が計算で出た場合、実際には1200秒(20分)露光時間が必要。届いたピンホールカメラには50秒以上の場合12倍すると書いてあるが、これはTri-xなど古いフイルムを想定したもののよう。

T-Max400では300秒(5分)、T-Max100で200秒(約3分)とTri-Xの半分以下なっている。感度を考えれば、同じ光の環境ではT-MAX400が一番短いことになる。計算式は、
 必要な時間=(計算で出た露光時間)exp(フィルムの係数) expは10のべき乗
係数はTri-xが1.54、T-MAX100が1.15、T-MAX400が1.24となっている。同様にイルフォードのフィルムのデータシートではD100=1.26、D400=1.41、D3200=1.33、HP4+=1.26、HP5+=1.31、K100=1.26、400=1.30。
 値段と特性から選ぶとケントメアがいいのかも。(ヨドバシ通販で840円)アクロスは120秒までは補正の必要なしとしているが、6×6のフィルムは今はない。アクロスIIも同じ処方のようだ。カラーネガフィルムの場合、例えばPortra400ではデータは無く自分で試験しろと書いてあるが、他の白黒ネガを同じく、とりあえず1.3ぐらいと考えて撮ってみるのが正解だろう。

 いすれにせよ、特性のわからないフィルムでは、まずデータシートを見て計算し、データシートがないものは、係数1.3ぐらいで撮ってみて調整するしかない。double-Xは映画用フィルムなので、長時間露光は想定されていない、しかし、その歴史から、特性はTri-X(1.54)と同様だろう。

 昼間の数秒の撮影ではだいたいその1.5倍から2倍の値。夜Ev=6(ISO100)の環境で絞りがF=138の場合、計算からは約5分の露光時間が出るが、相反則不軌の特性を考えると、特性が1.3のフィルムでは約30分の露光時間が必要となる。そういう意味では、長時間露光する場合にもデジタルカメラの方が相反則不軌の特性の影響を受けずに有利ということにはなる。天体写真に使うカメラのデジタル化が早々に進んだのはこのためのようだ。

【追記 2024/03/27】昼間の試写用にケントメア100 120を注文してみた。

コンデジを露出計として使う

 単体露出計を使う場合、部分測光になるため、撮ろうとする方向でも露出計を向けた向きで値が違い、画面全体ではデコボコする。なので全面平均測光の露出を知ろうとすると、コンデジの全面測光(GRではブロック測光)をつかうのが良いのでは無いかと思う。それに、スポット測光や中央重点測光の機能もついている。

 また、単体露出計のL-308Bの受光角は40°。それに対し、焦点距離50mmのレンズの画角は47°でほぼ合っているが、28mmの画角は75°なので、中央の1/4の部分を測光しているにすぎない。

 しかし、デジタルカメラの絞りや速度は可変でなので換算しにくいと思っていた。そこで、これまで撮った写真の記録をグラフにしてみるた。下のグラフのようにEV値を横軸にすると、絞りは3点(F2.4, F3.5, F7.1)しかないことが分かった。したがって、EV値を0.5単位ぐらいで取ると、20位の絞りと速度の組み合わせで夜から昼のEV換算表ができることになる。もしくは、昼用と夜用で0.25単位でつくれば良いかも。特に暗い夜には有効な気がする。じっくり撮る時に使えそう。本当はコンデジ自体でEv値を表示してくれれば良いのだが。デジタルカメラでは余り意味のない、従来の、絞りと速度だけしか表示されない。
 ピンホールカメラのようにF値が固定だと、そのEv表の一つの欄に、必要な露光時間を書くことができる。したがって、コンデジに表示される絞りと速度から、すぐに必要な露出時間が分かる。

 他のコンデジでも同様の仕組みだろうから応用できる。

できた換算表はこんな感じ。

【追記 2024/03/27】1秒以上の露光が必要な時、フィルムでは相反則不軌の特性の影響が出るのでその補正が必要。そのため実際には計算から出た露光時間の数倍の露光時間が必要。ここを参照

Vision3 500T タングステンフィルムのISO設定値

 Vision3 500Tを使う場合にちょっと悩むのが、カメラや露出計に設定するISOの値です。フィルムの説明書には感度は以下となっています。
【感度(露光指数 E.I.)】
タングステン:500
デーライト :320(コダック ラッテン2 ゼラチンフィルター No. 85 使用時)

 これから、フィルター無しで撮影する場合には、カメラや露出計をISO500(400+1/3)に設定すれば良いことになります。では85Bフィルターを使用する場合にはいくらのISO値を設定すればよいのか?
 これは、カメラや露出計の側光部分に入る光がフィルターを通っているかどうかで変わります。例えば一眼レフやミラーレスやM6などでは、フィルタをつけたレンズを通ったあとの光で測光しているので、ISO値には500を設定します。単独の露出計や測光部がレンズとは別に測光窓ついているレンジファインダー機ではISO320(200+2/3)に設定します。測光部が別であっても、フィルターがその部分(測光の窓)をカバーしているのであれば、ISO500に設定します。

 Vision3 500Tに85Bフィルターをつけた場合には、250Dとの感度の差はほぼ無い(+1/3)ことになります。

 なおTiffenの85Bフィルターの減光の仕様は0.6(2/3)段の低下ですが、ケンコーのW12もしくはW10は1段の低下としているので、ISOを250(200+1/3)にする必要があるようです。W10の方がW12より色が薄いので、もし入手したら、露出計で減光具合を調べてみる必要があります。

TAXONAのオリジナルスプールと軸受

 TAXONAについてきたスプールにはフィルムを引っ掛けるところが何もなかったけど、本来のTAXONAのスプールはこの写真のような構造だったらしい。後期だけだった可能性ものこるけど。

 また、先日ヤフオクに出ていた以下の写真の裏蓋の軸受は、しっかりした軸受が付いている。後期は軸受が改良追加されたらしい。本来はこのようなパーツが必要だ。残念なことに、落札者無しに早期終了してしまっていた。整備済みとする割には、レンズ周りにゴミがいっぱいついていた。きれいにされたものが、また出てくることに期待。

ピンホールカメラの露出設定方法

 カメラの露出の延長線として、ピンホールカメラの露出設定を調べてみた。
 ピンホールカメラの場合、絞りの穴の大きさと、フィルムまでの長さ(焦点距離)の組み合わせは一つなので、普通のカメラより考え方は簡単だ。ピンホールはだいたい0.2~0.3mmの穴が使われ、カメラのボディを利用すれば、レンジファインダーの場合の焦点距離は20mm程度。なのでF値は20/0.2でF100程度の固定となる。ISO100のフィルムを使えば、晴れの日(Ev=14)とすると、以下の表からシャッタースピードは0.6秒となる。しかし、0.6秒程度を正確に手で開閉することはできないので、4倍か8倍のNDフィルタを用いて、Evを12もしくは11とすると、シャッタスピードは2.5秒~5秒程度となり、手でも開閉できるスピードとなる。1秒以下の場合に対応するために大判レンズのシャッター部を利用している人もいるようだが、数枚撮るためだけだと、そこまでする必要はないだろう。

 計算していくうちに、ヤフオクで落としてしまったブローニフィルム用の個体はF138となっていた。この場合、晴れの日が1秒、曇が4秒前後でちょうどうまい組み合わせであることがわかる。夜にはISO100のフィルムの場合、数分から数十分の露光が必要となる。このカメラには、露出計で絞りとスピードの組み合わせからF138の場合のスピードを見る換算円グラフが付いているが、露出計でEV値を測れば、下の表で直読できる。

 また、最近のピンホールカメラはデジタルカメラのボディを利用しているらしく、この場合ISO感度を数万に上げることができる。例えば同じF138のピンホールを使ったとすると、ISO感度をISO100から100倍のISO1万にあげてしまえば、1秒のシャッタースピードは1/100秒まで落ちることになる。したがって、今では、長時間露光してからフィルムの現像を待つこともなく、すぐに結果まで見えてしまうことになっているようだ。フィルムを使い、露光具合から、F値を推測する必要もない。しかし、ピンホールカメラによる長時間露光で生じる、動いているものの消失や、川や海での滑らかな波は見ることはできない。

 なお最近はF値138を設定すると、アプリで簡単に露出時間を計算してくれる。これはLight MeterというFreeアプリ。測定値はEv=4.8で約11分。上の表のEv=5.0で約10分とほぼ同じ結果。

【ピンホールカメラのF値の測定】
 新しく作ったピンホールのF値を知りたい場合、デジタルカメラであれば、マニュアルで最適なISO値を決めれば、その時のシャッタースピードからF値は計算できる。
 フィルムカメラの場合、上記表から、EV=12の状態へNDフィルタで持っていき、ISO100のフィルムで1秒から10秒で撮影すれば、F=50からF=200位をカバーでき、その中で一番良いネガの状態のシャッタースピードからF値が推算できる。

【追記 2024/03/27】1秒以上の露光が必要な時、フィルムでは相反則不軌の特性の影響が出るのでその補正が必要。そのため実際には計算から出た露光時間の数倍の露光時間が必要。ここを参照

いまから始める白黒ネガ自家現像

 白黒ネガを街の現像屋さんに出している場合、現像に1000円、CD化に600円程度で1本あたり1600円ぐらいかかっていると思います。月に4,5本撮っているひとには大変な出費になっているはず。そこで自家現像に切り替える場合どの程度の費用がかかるのか見てみました。

 まず撮り終えたフィルムを現像するための、初期に必要な備品と薬品をまとめたのが以下の表。現像タンクはステンレスのリールを使うステンレスのタンクが推奨ですが、いまはヤフオクでしか手に入らないので、ここでは入手が用意なパターソンのもので試算しています。アマゾンでは類似の製品が5000円ぐらいででています。ステンレスリールのタンクの必要な溶液は1本あたり250mlですが、パターソンでは290mlとしています。なお、現像液はマリックスの3リットル用のものですが、1+1の希釈(水で半分に薄める)で3Lx2/290ml=20本現像できます。カップや攪拌棒などは、ダイソーで同等品があるかもしれません。

 またデジタル化のために、Epsonの最上位機種GT-X980を使うとすると、実勢価格は約6万5千円。費用としては大きいですが、自分でスキャンの解像度を決めることができ、また今までの紙写真もデジタル化できるメリットもあります。私の使っているGT-X970は20年以上使えています。合計で9万万円ぐらいの初期投資が必要となります。なお、カラーネガの場合には、カラーの現像液キット(数千円)の費用を加えるだけです。

 店に頼む場合に1600円/本かかっているとすると、50~60本ぐらいでペイすることになります。したがって、月に5本程度以上撮っているのであれば一年で元が取れるので、自家現像を考えてみる価値があります。さらに、バルクローダを用意して、30mのロールフィルムが使えるようになると、さらにコストが下がります。

 現在ではまだ中古の引き伸ばし機がヤフオクで安くで取引されているので、これを機会に、白黒プリントを体験してみるのもありです。

Rollei 35AFの追加情報

追加情報が出てきてますね。

Rollei 35 AFはこんな感じだと。
フィルムサイズ:35mm full-frame film camera.
レンズ: 5枚構成の35mm F2.8(F2.8-16)
ボディ:総金属製
価格帯:650-800US$(10-12万円)

 コンタックスT-3(ゾナーT*38mm F2.8(4群6枚) F2.8~16)とほぼ同じ仕様で、当初の価格帯すね。もともと、T-3がローライ35のAF版だったのでしょうから。レンズはローライ35にも設定のあるT-2と同じ4群5枚のゾナーでしょうね。トイカメラを除くと、現状新品で買えるフィルムカメラはライカだけなので、デジタルから入ってフィルムを試す人の選択肢となりますね。当然フィルム一筋の人にはサブ機としての選択肢になります。T-3の中古価格が崩れるかも。

 それに比べると、Pentaxフィルムプロジェクトのハーフのカメラは、どっちつかずの製品になってしまいますね。価格帯が数万円のレベルとすると、私ならレンズも4群5枚構成のLomo LC+(定価:3万5千円)を選んでしまいます。ハーフサイズというのはフィルムメーカの都合でしかないので。いまさらレンズもテッサーでは無い、ゾーンフォーカスのハーフカメラを作られても、ヤフオクに数千円でいくらでもころがっている。リコーGR1を40mm位で復刻するだけで良かったのでは。。


タングステンフィルム用85Bフィルターの入手方法

 タングステンフィルム(Vision3 200T,500T)を日中の太陽光で使う場合、手間がかからないのは85Bフィルタを付けて撮影すること。しかし、85Bフィルターで検索しても日本の販売サイトでは「Tiffen」の一枚一万円を超える高額なものしか無い。日本製としては、ケンコーのW12フィルタが同等品だ。

 WEBやYoutubeなのでは、フィルターを付けずに、青みの画像をそのまま掲載しているサイトもあるが、それは200Tや500Tの本来の使い方では無い。

 私の場合には、検索したらアメリカのAmazonにTiffenのものが出てきたので、52mmと55mm2枚で一万円ちょっとした。ケンコーの直販サイトのW12だと、同じ2枚で9400円ぐらいで少し安い。とりあえずは大きめのフィルタを一枚買って、ステップアップリング(数百円)で対応する方法もある。ライカ用の39mm口径の85B/W12フィルターはもともとないので、私の場合は52mmのフィルタが装着可能な39mmのフードで対応している。

 【追記 2024/03/26】Tiffenの減光の仕様は0.6(2/3)段の低下ですが、ケンコーのW12もしくはW10は1段の低下としているので、測光部がフィルターを通らない露出計やレンジファイダー機では、ISOを250(200+1/3=400+(1/3-1))にする必要があるようです。一眼レフやM6などの場合は気にすること無く、フィルターをつけてもISOの設定は500です。

Vision3のどのタイプのフィルムを選ぶか?

 kodakのカラーシネマフィルムVision3には、50D、200T、250D、500Tと4種類のフィルムがあってどれを選べばよいか迷います。普通に買う場合はそれぞれ400ft(120m)で5万2500円もするのですから。私の場合、Youtubeによく出てくる500Tを人気があると思って選びましたが、今考えると「500Tでも撮れるよ」といった内容が多いのではないかと思います。200Tや500Tのタングステンフィルムを昼光で撮る場合には、85Bフィルターや、フィルターを付けない場合ホワイトバランスの調整がスキャンしてから必要です。85Bフィルターを付けると実質の感度は350ぐらいです。85Bフィルターを付けて撮ったネガは普通のネガと同じでなので、最後の調整が楽です。

 選択肢として参考になるのが、コダックのメールマガジン(「高津川」)にある次の内容です。(16mmの映画の場合ではありますが、同じと思います。色合いもメールマガジンの動画と同じ感じ。)
フィルムはデーライトタイプが8割、特に低感度の50Dが半分を占めました。
佐光C: 500T、200T、250D、50D、と全タイプを使用しています。テスト撮影だと高感度の500Tはイメージと少し違った感じだったので、当初は50Dをメインに考えていたのですが、天候の問題など物理的に無理なシーンがあり、高感度も使用しました。基本的に、晴れのデイシーンは50Dで、曇りや室内の場合に250Dを使用しています。200Tは、250Dよりも色彩と階調が豊かなので、夕景や一部の室内シーンで使用しました。500Tはナイターがメインですが、500Tで撮影した芝居のシーンを観てみると本編だとすごく良くて、フィルムで撮った良さが50Dのシーンよりも出ていて改めて驚きました。』

 なので、まずは晴れた昼間の撮影がメインの人は50D、夜がメインの人は500Tといえます。両方ともという人は250Dか500T(昼間はwith 85Bフィルター)ということになります。このコメントから画質的にはそんなに差はないような感じです。なお、Cinestill800は500Tのリムジェットを剥がした(もしくは塗る前の)フィルムですが、滲むような赤が出るようです。しかし、500Tではその色は出ませんので期待して選ばないように。

 カーラーネガの最安値が一本1500円になった今の時代では、その半分の値段(52500円/(70~80本)=約700円)で入手できるVision3は貴重な存在です。また、現像は自家現像となりますが、白黒現像に比べ若干手間がかかるだけで、難しさはありませんし、白黒現像機材があれば他に特別な機材も不要です。現像代まで含めて1本1000円を超えないというのは、昔より安いということになります。

 カラーシネマフィルムであるVision3にはリムジェットという反射防止用の黒い膜がフィルムの裏面に塗られています。このフィルムを普通に現像屋さんに出してしまうと、C41の自動現像装置内で溶け出して、装置を壊してしまいます。これを知らない現像屋さんが普通に受けてしまって事故が発生したことがあるようです。(市販のシネフィルムにはパトローネにECN2現像と書いてあります。)最近では知れ渡っているようですが、カーラーシネネガフィルムは街の現像屋さんには出せません。(カラーシネフィルムは現像屋さんの商売にならないので散々に書かれています。東南アジア等海外ではECN2現像対応の現像屋さんが普通にある国もあるようです。知らない間に現像方法もガラパゴス化していたということかも知れません。)
 このリムジェット層を剥がすのに昔は情報がなく苦労したようです。現在ではダイソーで売ってる100円の重曹で簡単に落ることが分かり、手間はかかりますが、問題ではありません。重曹を溶かした水(1リットルの水に大さじ2,三杯の重曹)に1分付けてから、水洗い(現像タンクを強くシェイクする)を2、3回すればほとんど落ちます。それから現像を始めます。最終的には現像が終わってから吊るして、ウエットコットン紙で2,3度表面を拭けば完全におちます。
 Vision3の現像方法はECN2現像(41℃で5分)が基本ですが、私の場合、リムジェット層を落としてから普通のカラー現像であるC41現像をしています。C41現像の方がコントラストが高いという情報もありますが、比べてはいません。ECN2現像キットにはリムジェットを落とす薬品もついていますが、重曹で十分です。
 C41の現像キットでは38℃で3分半、32℃で8分半が標準とされていますが、現像時間が短いと再現性に問題がありそうなので、私の場合32℃で7分現像しています。なので、いわれているほどカラーネガも温度や時間にシビアでは無いようです。

中年オタッキーさんがヤフオクで5420円/5本で250Dを出品しているので、とりあえず試してみるのもありです。

 

V3 500T(85Bフィルタ無し)の色調整(II)

 エプソンのスキャナGT-x970にSilverfastというScanソフトを付けて、昔撮ったポジの読み込みをやってみたたが、すでにWEBに掲載している画像の色に持っていくのが、結構たいへんだった。これはSilverfastが読み込んだデータに手を加えすぎているのが原因と思われる。85Bフィルタ無しのVision3 500Tのカラーネガについても同様だった。特にネガでは、フィルムのタイプ名を選ぶ必要があり、読み込んだデータに大幅に手を加えられているようだ。

 逆にエプソンのオリジナルのソフト(Epson scan)で仕様だと思っていた、最大の欠点だった、横長画像の場合で上下をトリミングされる事象が、設定でほぼフィルム枠のまま読み込めることを発見。デフォルト設定で、トリミングする仕様になっていたようだ。(20年目にして気付いた・・・)

 したがって、当面は、今まで通りGT-X970のソフト(Epson scan)でスキャンして、Silkypixで色調整をすることにした。

V3 500T(85Bフィルタ無し)の色調整(青みを消す)の手順は以下。
①GT-X970のソフト(Epson scan)でネガをスキャンする。
②(以下Silkypixで)トリミング位置の設定
③パラメータの[自動設定]ボタンを押す。
④(明るめになるので)ほぼ明るさを元に戻す。
⑤トーンカーブで若干暗めに下げる。
⑥ホワイトバランスの色温度を+500度の範囲で調整して上げる。
⑦ホワイトバランスの色偏差を+5の範囲で上げる。
⑧ ⑥⑦を最適になるように調整する。

だいたいこの手順で(本人が考えるところの)普通の色になる。
Silkypixの良いところは、この操作を直接オリジナルに加えていないこと。
なので、確実に最初からやり直すことができる。

なお、当然ながら85Bフィルターを用いた場合には、ホワイトバランスの調整は必要なく、Epson scanで読み込んだ画像を使い、Silkypixの自動調整とトーンカーブをいじるだけで次のような画像になる。このようなカラーバランスの調整や85Bフィルターの装着が面倒であれば、最初から500Tではなく250Dを選ぶのが正解。シネステール800TからVision3 500Tに流れる人が多いようだけど、800Tのような赤の輝きはVision3 500Tにはない。Vision3 500Tは普通のカラーネガフィルムだ。