シフトレンズ(ホール)を持ったピンホールカメラ

 RealitySoSubtle(仏国)のピンホールカメラには、ピンホールを2つ持った6×6ピンホールカメラがある。センターの他に1.5cm上にもう一個ピンホールがある。20.5mmの焦点距離なので、約36°上を向いた点がセンターになる計算だ。このピンホールを使えば、6×6超広角の宿命である無駄に地面を撮ったり、上を向ける必要もない。世間にはいろいろおもしろいピンホールカメラもあるものだ。巻き上げノブが2つ付いていてどちらにも巻き上げられるというのも、間違って1コマ先に送ってしまっても修正できて便利。

ピンホールカメラはいつから映像表現の世界に?

 ピンホールカメラは現代のカメラの初期段階のものであり、WEBではそのような紹介がされている。しかし、半世紀前(今も?)にはピンホールカメラは子どもの遊び道具にしか考えられていなかった。ではいつからピンホールカメラが映像表現の世界に現れたのか?

 例えば小室三喜雄のピンホール俱楽部(閉鎖)には「ピンホール写真は年20前から作品表現の時代に入っています。」とある。なので、ピンホールカメラが映像表現に用いられ始めたのはたぶん1990年代ごろからということになる。これはデジタルカメラの導入の時期とほぼ重なり、一見矛盾している。しかし、デジタルカメラのフィルムサイズ(35mm of APS-c)を考えれば矛盾はない。35mmサイズのカメラのフランジバックでは超広角の画角は得られないからだ。中判や大判フィルムを用いるピンホールカメラでは35mmフィルム換算で15mm程度の超広角表現が普通にできてしまう。

 英国では風景写真家のSteve Goslingがピンホールカメラを使った写真集「Lensless Landscapes」を2008年に出版している。小室三喜雄氏がピンホールカメラの販売を始めたのもこのころだ。ピンホールカメラは映像表現の手段として一部写真家に広がっていったと思われる。

 ではなぜ一般に知られていないのか? これは、カメラが大企業の商業ベースに乗らないからだろう。レンズが不要で原価としては数千円しかかからないし、需要も見込めない。写真工業会から外れたところで、ほそぼそと手作りされているのが現状だ。なので、メディアへの露出が少なく、一般人には知る機会がない。また、2010年頃に広告主の企業が写真家に対してフィルム費用を経費として認めなくなったので、商業写真家も商業写真にピンホールカメラを使うことはない。

 一部の写真家が個人的な写真活動をピンホールカメラで行っているのが現状だろう。しかし、デジタルカメラもスマホにその座を奪われ、行き着くところまで行ってしまった高解像度が嫌われ、「フィルムの再現」とかおかしなことになっている現状では、アナログ再生としてピンホールカメラは広がっていく可能性はある。

伝説のピンホールカメラ(2): 穴ガメ

 「穴ガメ」は写真家の小室三喜雄さんが製作販売されていた、マミヤRB6x7ホルダーをベースにしたピンホールカメラ。このカメラで撮られた写真はストリートスナップ的なものが多いようです。飛行機の離陸の様子を撮った写真もこのカメラによるものだ。

 焦点距離は25/26/27/28mmの4機種で6×7判で画角を計算すると、121°~116°前後、35mm判換算で12.5~14mm程度。ピンホールのサイズは0.2mmのようで、穴の出来上がり次第で焦点距離を調整していたようです。 2023年初めに販売15周年とされているので、2008年頃から販売を始められていたようです。

 なおHPは「2023年3月13日をもって閉じた」と表示されており、販売も同様と思います。

【参照サイト】
小室三喜雄のピンホール俱楽部(閉鎖)
ピンホール写真と旅の記憶
よどじん(平成27年1月)

伝説のピンホールカメラ(1): Mombetsu45/65

 ピンホールカメラのサイトを回っていると、制作販売されていたピンホールカメラがでてくる。そのうちのひとつがMOMBETSU 45/65と言う木製の6×9cm判ピンホールカメラ。北海道紋別の菅原さんという方が制作販売されていたようで、もう販売はしていないそうです。
 このカメラにはファンの方もいて、このカメラで撮った写真展も開かれているようです。

6×9判で画角を計算すると、
Monmbetsu 45が焦点距離45mmで画角96°、35mm判換算で19mm程度。
Monmbetsu 65が焦点距離65mmで画角75°、35mm判換算で28mm程度。
ピンホールカメラとしては望遠側になるようです。
ピンホールのサイズは不明なれど、写真展の記述から0.2mm程度と思われます。

【参照サイト】
かわうそと愉快な仲間たち15〜地場の木製ピンホールカメラ
第4話 ピンホールカメラZERO2000
写真展「光画 with Mombetus 45/65」
臼井愛子写真展「ひかりとあそぶ」(Monbetsu45)